2008年12月23日
ここ数日、千尋を見掛けない。
先月の文化の日以来、あたしの家に住み着いたのは、紛れもなく世界を相手取るサンタクロースなわけで。
住み着いたはいいものの、彼は一応、しつこいが紛れもなくサンタクロースなわけで、12月間近は追い込みなのか何なのか、とにかく、家も仕事も空けることが多かった。
ちなみに、会社では出張扱いとなっている。
派遣社員が出張……皆、どう思っているのだろう。
そんな本日、天皇誕生日。
天下の休日ではあるが、生憎とあたしは出勤だ。
「休日手当てはつくのか」
細やかな疑問を胸に出勤してみれば、年末の仕事にてんやわんやな面子が、ちらほらとデスクで格闘中だった。
あたしも変わらないか。
そんなことを思って、いざ、自分のデスクへと足を運べば。
「あ、朱美先輩!」
女子社員の後輩が、てこてこと駆けてきた。
「何、どうかした?」
「はい、あの、三多さんから置き手紙を預かったんです」
「……置き手紙?」
訝しむのは後輩も一緒だったらしく、はい、と首を傾げつつもそれを手渡してから、きゃっ、とかわけのわからん黄色い声を上げて、そそくさと去っていった。
……何なんだ。
相変わらず首を傾げたまま、かさかさとそれを広げてみる。
『朱美さんへ
24日、期待しててくださいね!
サンタクロース、千尋より
2008年12月20日』
ご丁寧に、日付まで書いてあったけど……その日は、しっかりうちで夕飯を一緒に食べていたような。
何故にわざわざこんなものを。
「クリスマスって……ああ、あたしは『よい子』なんだっけ。」
いつぞやの作文を思い出して、少しだけ笑っちゃった、12月23日の朝。
赤い帽子に赤い服、今の時期なら暑苦しくもなかろうファーと付け髭のサンタクロースは、今頃、てんやわんやなのだろうか。
そんなことを考えて、あたしも頑張るかと、気合いを入れてデスクに座った。
「そういえば三多は?」
「何か、会長直々の仕事してるらしいよ」
「へえ」
「……」
オフィスで耳にしたそんな会話は、聞こえなかったことにした。
end?