弐、本当に、良かったのですか?
一話の続きです。
あれから一ヶ月後のお話。
わからない。どうしても。
どうしてレイ様はあの娘《こ》に夢中なのか。事あるたびに彼女のことを思っているのかいないのか、よくわからないがボケっとして物思いにふけっている。
軽く嫉妬。
あの娘に会うまでは、私の事もしっかり見ていてくれたのに。ずるい。
なんて思うが、私は女ではないので女性の嫉妬とは違う。私が女性でもっと魅力的だったら、レイ様はあの娘に惚れることはなかったのだろうか?
それに、レイ様と私がこの町に来てからもうじき一ヶ月が経とうとしている。
こんなことはいままで無かった。町の滞在期間は、長くても一週間程度。一ヶ月など一度もない。
それだけで、レイ様があの娘に惚れきっているのはわかった。
『はぁ・・・』
思わず出た溜息。それに気付いて悲しくなった。
自分が、そこまでレイ様を必要としていたなんて。
ふいに、後ろからひょい、っと抱き上げられた。細い、華奢な指と優しく伝わってくる体温。レイ様?
「ん、どした?」
レイ様は、私を膝の上に乗せると、撫で始めた。
・・・温かい・・・
「町、出よ」
唐突にレイ様は口を開いた。
『え・・・?』
どうして?レイ様の顔を見ようと見上げる。かげっていて見えなかった。
「やらなきゃいけないことが、あるから」
レイ様は、悲しげに、力強く、そう行った。
次の日の朝。レイ様と私は町を出た。
あの娘が死んだと、はじめて知った。
「病気だったんだってさ」
『・・・・』
「ヒトはもろいね、ミナ」
『レイ様・・・』
なにも、言えなかった。
外套で隠されて顔の見えないレイ様は、泣いているように見えた。
この二話は、二人の過去、のつもりで書いてます。