壱、レイ様、恋ですか?
どうも、蜜柑です。
私はミナ。猫に見えるがれっきとした人間だ。私の前を歩く顔の見えない怪しい子供は、レイ様。私の主人だ。背は150センチぐらい。街中では絶対顔を見せないが、かぶっている外套をたまに外した時にみえるのは、綺麗な明るい緑色の髪と瞳。女の子のようにも見えるし、可愛い顔の男の子にも見える。どうして顔をヒトに見せないかは、私にもわからない。私とレイ様が出会った時には、もうレイ様はこの状態だったから。
そのレイ様は、
「♪」
両手で持った熟した果実を満足そうにかじっていた。
『レイ様・・・』
私が言うと、レイ様はちらりとこちらを見た。
「何?」
『いえ・・・別に・・・』
言う、といっても私のような話すことのできない動物は、主の頭に直接言葉を伝えるようにして意思の疎通をしている。
まったく、レイ様は便利な体を持っているからといって自由気まますぎる。
そんな私の気も知らず、レイ様は鼻歌まじりに果実をかじる。
「う~~~ん、おいしい」
そんなレイ様、最近気になる娘《こ》がいるようで、それをみているとやっぱりレイ様は男の子なんだなと思えてくる。
その娘は、レイ様がさっきからずっと咀嚼を続ける果実が売っていた店の主人の一人娘で、黒い艶やかな髪と赤みを帯びたとび色の瞳が特徴だ。
どこにでもいそうな娘なのに、どうしてレイ様があの娘に惹かれたのか疑問だったので聞いてみた。
『レイ様は、あの娘《むすめ》のどこに惹かれたのですか?』
少しストレートすぎたか、レイ様は、外套の下からでもわかるくらい顔を赤くした。
肝心の返事は、
「なっ、何っ、何聞くんだよもーーっ!!みっ、ミナのばーーーーーかっ!!!」
相変わらず可愛いですね、レイ様。
この二人、どうなるんでしょうか??レイの恋が実るといいですね!
(女の子の名前、決めなきゃ・・・)