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衣織の物語  作者:
73/73

衣織の物語71「地区演劇生徒理事会」11

 テーブルは壁際に追いやられ、部屋の中にはイスが三重の輪を描いて配置された。生徒たちは学校ごとに着席している。作業で汗をかいたから、窓は全開だ。資料をパタパタさせ、多少の涼を得ている女子もいる。さて、これから何が始まらんとしているのか?


上遠野「それではこれから生徒交流会を始めます。まず初めに、自己紹介をお願いします」

 隣の男子が上遠野さんの袖をつついた。何やらささやいている。少し慌てた顔の上遠野さん。カワイイ。

上遠野「……失礼しました。これからの流れですが、まず全体の顔合わせを兼ねて簡単な学校紹介をお願いし、その後、いくつかのグループに分かれて交流していただこうと思います。よろしいでしょうか?」

 生徒たちはみな、「ハイ!」と元気に返事をした。そのあまりの勢いに、私の胸はドキッとした。演劇部員は元気で声が大きい子が多い。ふだんも、場にそぐわない大声での会話もある。知らぬ人からは顰蹙(ひんしゅく)ものだけど、これは日ごろの習慣になっているので、そう簡単には変えられない。でも、元気がいいのは、一般的に世間の評判がよろしいことが多い。いかにも高校生らしいということだろう。


 制服で判断したところ、5校くらいの学校が参加している。

上遠野「それでは手前の学校から、簡単な自己紹介をお願いします。まずはじめに、小高(おだか)高校さん、お願いします!」

 指名された高校の生徒たちは、少し顔を見合わせてざわついたけど、やがて意を決してひとりの男子が立ち上がった。それに続き、他の部員たちも立ち上がった。

男子「小高高校演劇部部長の鎌田です。うちの学校は現在演劇部員5名の弱小チームですが、みんなで力を合わせて、日々活動しています。この春の発表会は、サスペンスものに挑戦します。当日は、皆さんもなぞ解きに挑戦してみてください。よろしくお願いします!」

部員たち「お願いします!」

 部長がお辞儀をすると、他の部員たちもそれに倣ってお辞儀をした。このように、うちと同じく少人数の学校もあり、頑張っているのだと勇気づけられた。

上遠野「小高高校さん、ありがとうございました。次は桃内(ももうち)高校さん、お願いします」

 桃内高校の生徒が一斉に立ち上がった。

女子「桃内高校演劇部部長の小林です! 私たちは総勢20人。毎日夜7時まで練習しています。今年は自主公演も計画していますので、その折には皆さんぜひご鑑賞ください! よろしくお願いします!」

部員たち「よろしくお願いします!」

 軍隊かと思うほどの整列・挨拶・息の合い具合。同じ演劇部でも、学校によってまったくカラーが異なっていて面白い。でも、上下関係が厳しそうで、この学校じゃなくてよかったと思う私だった。うちの学校の先輩方は気さくだし、まったりとした雰囲気が私に合っている。


 次に立ち上がったのは、相馬北(そうまきた)高校だった。

部長「相馬北高校演劇部部長の志賀です。うちの学校は、代々、生徒創作脚本を使用しており、今回の発表会でも高校演劇部の実情を赤裸々に描き出した、大スペクタクル活劇を予定しています! 作者はもちろん部長のわたくし。みなさまどうぞご期待ください!」

 隣に座っていた副部長が私の袖をつつき、小声でささやいた。

副部長「北高は、生徒が脚本を作るから、面白い時とズッコケる時のギャップが激しいの。クジみたいなものね。今回はどちらに転ぶかしら。……でも、あの様子じゃ、悪い予感しかしないわ」

 相変わらず口の悪い副部長だ。でも、彼女の言うことはたいてい当たる。

副部長「去年の秋のコンクールでは、和服を着て大衆演劇のようなお芝居をしてた。大立ち回りをして、客席にまでなだれ込んだのには閉口した。真っ白い顔のおしろいが、こっちにまで飛んでくるかと思ったよ」

 説得力のあるご説明に納得した私だった。


 こんな感じで各校の紹介が進み、次はいよいよ私の学校の順だ。さて、どうしよう。私の役回りは何だろう?

 部長さんの方を見ると、「大丈夫。一緒に立ってればいい」という目線を送ってくれた。


#小説

#高校生

#東日本大震災

#演劇部





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