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衣織の物語  作者:
69/73

衣織の物語67「地区演劇生徒理事会」7

 ペットボトルを透かして振ると、水は底の方で煌めいている。初めての理事会に緊張し、水分を取りすぎたのだろう。

 交流会に向け休憩時間にトイレを済ませた私は、生徒理事会の会場へは戻らず、隣の顧問会の部屋をガラス越しに覗いてみた。こちらもちょうど休憩時間のようで、くつろいだ姿の先生方が見える。

 いろいろな種類の先生がいる。これは種類と言わざるを得ない。まず、いかにも教師然としたなりの男の先生方が一番多い。以前紹介したロックミュージシャンのような男の先生とうちの顧問は、隣同士に座って話をしている。仲良しなのか? 女性の先生方は部屋の隅に固まり、おしゃべりをしている。年齢は様々だ。

 するとそこに部長さんがやってきて、顧問に近づき話しかけた。発表会の上演順を伝えているのだろう。顧問に資料を見せながら、話をしている。隣に座るロッカーも資料を覗き込んでいる。そうして部長さんに何やら言葉をかけ、部長さんは頭を掻いた。顧問もロッカーも笑顔だ。何を話しているのだろう? 楽しそう。私も仲間に入れてほしい!

 しかしまだ駆け出しの身で顧問会の会場に討ち入るなどおこがましい。私はガラス越しに「いーなー」と思って眺めていた。三人はまるで友人同士のようだ。確かに部長さんは老成している。


 さて、まだ時間はありそうだ。ロビーにはいろいろな制服があふれている。ここはひとつ、探検だ!

 私という孤独な存在を囲繞する未知の女子&男子生徒。中学までは他校生との交流などなかった。(なにせパソコン部だ。情報処理室でパチパチ・クリックしていただけだった) それが今やこの色とりどりの制服の海。私という世界は、「演劇」との出会いによって広がるのだろうか? ぜひそうでありたい! できればこの海原でイケメンと出会いたい! さらには美しいお姉さま方と! 

 と、いうことで、私の探検は始まった。私は獲物を狙う蛇のごとく、人と人との間をすり抜け、時にとぐろを巻き(どーゆーこと?)、未開の地の探検隊となった。

 私の知らない他校の高校生活のにおいがする。先輩と下級生の上下関係が厳しそうな学校もある。ざわめきと雑多な会話から、私はそれらを敏感に嗅ぎ取った。私の嗅覚はいつの間にこれほど発達したのだろう。高校という新しい環境は、私を確実に成長させているようだ。(ホント?)


 人ごみの向こうの少し離れたところに上遠野さんがいる。やや上気した頬がカワイイ。それとなく近づきながらさっそく聞き耳を立てると(わたしゃストーカーか?)、司会役がうまくいってほっとしたという会話のようだった。でもまだ交流会があるから、気が抜けないと言い、上遠野さんは両手のこぶしを胸の前で握り、小さく振った。彼女はいったいどこまで私の心を射抜けば気がすむのだろう? キュン死しそうだ。


 今すぐにでも上遠野さんとお近づきになりたい私だったけど、まだ機は熟していない。いま行ったら不審者だ。できれば自然な成り行きで話しかけたい。なぜか火照った頬をなでながら、飲み物を買いに自販機へ向かった。

 自分の名が見知らぬ私の胸の中で何度も呼ばれていることに、彼女は気づかないのだった。




 


#高校生

#東日本大震災

#演劇部





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