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衣織の物語  作者:
63/65

衣織の物語61「地区演劇生徒理事会」1

顧問「あとは影山だけだね」

部長「はい。あいつはいつも遅くて困ります」

副部長「例によってって感じです」

遠藤「ホントすみません」

部員たちは顧問の先生にそう言い、皆で頭をぺこりと下げた。私もつられて頭を下げておいた。

先輩方の動作は、ちょっとマンガっぽくて面白かった。特に遠藤先輩のしぐさにはいつも、ちょっとした愛嬌がある。


 学校の正面玄関には(ひさし)があり、それがちょうどいい日よけになっていた。今日は初夏を感じる気温の上昇と日差しで、皆は目を細めている。

 初めて参加する生徒理事会に、前日の夜から興奮を感じていた私は、太陽に背を向け、うす暗い玄関の中を覗いていた。これもまた初めての「公欠」によって午後の授業をサボれる淫靡な喜びにしばし浸っていた。


 やがてワタワタと走る音とともにそこから現れた影山先輩は、相変わらずのダラシナイ格好で、さっそく副部長の指摘が入った。急いで服装を直す影山先輩を尻目に、これでいかがでしょうかという目線を顧問の先生に送る副部長。目で会話できる顧問と生徒だった。


 ところで、生徒理事会とは、年に何度かある地区の高校演劇部生徒の集まりだそうで、各校の演劇部員が全員集合する。理事会の裏では、同時に顧問会も開かれる。だから、生徒たちだけで運営する会であり、このようなところに高校生の自治を感じた。自分たちで何かをしよう・成立させようとする大人っぽさ。中学とは全く違う雰囲気なのだろう。


顧問「みんな、昼食は食べたかな?」

部員「ハイ!」

顧問「それじゃあさっそく出かけよう」

部員「ハイ!」

顧問「現地集合で!」

私以外の部員「ハイ!」・私「ハイ?」

顧問の先生は「ではでは」と言い残し、職員駐車場の方へ向かった。「うちらと一緒に移動しないの?」と戸惑う私に、影山先輩が「行くよ!」と声を掛けた。先輩方は既に歩き出している。

部長「生徒は生徒で移動するんだ」

私「そーなんですね」

副部長「地区内の集まりや発表会は、生徒は生徒で移動して、現地集合なんだ」

私「そーなんですね」

遠藤「そーなんです」

先輩方は軽く笑いだした。

こんなところにも中学との違いを感じた。


私たちが校門まで歩いて行くと、丁度そこに顧問の先生の車が来た。

先生は、「じゃあな」という言葉を置き去りにし、エンジンをふかして走り去った。

影山「先生って、ああいう所があるよな」

遠藤「確かに」

副部長「いいじゃない。たまにはカッコつけさせてあげても」

影山「でも、生徒がいる近くでスピード出すのはどうかと思う」

部長「それは俺も賛成だ」


 その後、先輩方とバス停まで移動し、バスに乗り、最寄りで降り、会場へ向かった。私はなんだかピクニック気分でとても楽しい。同級生がいたらもっと楽しかったかも、とも思っていた。でも演劇部の先輩方はみなフランクなので、そんなに居心地が悪いわけではない。一番下の初心者ということで、甘えられる部分もある。


 バスには既に他校生も集団で乗っており、結構混んでいる。久しぶりのバス乗車に酔わないよう踏ん張って立っていた。吊革につかまり聞くともなく聞いていると、私たちと同じ演劇部のようで、春の発表会の練習の話をしている。

 窓の外には初夏の日に照らされた復興住宅が並んでいる。バスは私の少しの緊張を乗せて会場へ向かった。


#小説

#高校生

#東日本大震災

#演劇部





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