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衣織の物語  作者:
47/65

衣織の物語45「部活動登録」3

部長「影山。スマホばっかり見てないで、ちゃんと話に参加しろよ。自己紹介、お前の番だよ」

 影山先輩はスマホが手から離せない人のようで、みんなの自己紹介中もチラチラ見続けていた。部長さんとしては、それが気になったのだろう。部内の綱紀粛正役だ。


影山「俺の名は影山。みんなからは『カゲ』って呼ばれてる」

頼まれもせず、まったくイケてないポーズをつける。

?「ハゲ」

影山「誰だいま、『ハゲ』って言ったの!」

部員は皆沈黙を貫いた。先生も笑いをかみつぶしている。

影山「まあ、『カゲ』っていうのも、俺に対する親しみを込めてだろうけど。衣織も『カゲ』でいいよ」

私「はい。よろしくお願いします!」

影山「ヨロシクッ!」

 影山先輩は、物事を深く考えるのが苦手な人のようだ。だからいきなりの呼び捨ても、まあ、大目に見よう。

遠藤「それで終わり?」

影山「何が?」

遠藤「自己紹介だよ」

影山「あぁ、自己紹介。自己紹介ね。そーだなぁ、衣織はゲーセンは好き?」

私「まぁ、ひとなみです」

影山「そぅ! それは良かった。それで、何が好き?」

私「(話の流れからおそらく、ゲームセンターで何が好きかという問いであろう) クレーンゲームが好きです!(と、ちょっと明るく言ってみた)」

影山「そぅ! 俺もたまにやるよ。一時ははまってて、だからどの台が取れるかひと目見ただけでわかるようになった」

私「私は、たしなむ程度です」

影山「でもこれで、ゲーセン仲間が増えた。こんど部活の帰りに、みんなで行こう!」

私「はい、皆さんで今度、一緒に行きましょう」

影山「ヤッター!」

 しかしそれに対する賛同者は、残念ながらいなかった。人望というものに欠ける人なのだろう。

 以上が、影山先輩の自己紹介から得た情報だった。


 こういう時に皆のあいだを取り持つのが部長の仕事だ。

部長「と、いうことで、演劇部は、3年は俺1人。2年が3人という、少人数の部活です。これまで紆余曲折があって、途中で辞めちゃった人もいたんだけど、今はこのメンバーで頑張ってる。今回新たに衣織さんという新入部員を迎えることができて、みんな本当にうれしく思ってます。これからどうぞよろしくお願いします!」

 そう言って部長さんが頭を下げると、他の部員たちも皆、私に向かって頭を下げた。顧問の先生も同じだった。私も急いで頭を下げた。


 このように、先輩方は個性豊かで、この人たちの中で自分はどのようにもまれるのだろうという期待と不安が交差する私だった。


 その後、顧問の先生に登録用紙を渡し、とりあえず無事、部活動登録は完了した。この日は初日ということもあり実際の活動はなく、みんなのSNSに私も参加登録させてもらって解散となった。


 帰りがけに先生が言った。

顧問「ところでみんな、10日後には中間テストがあることを忘れるな!」

影山「ゲッ!」

 高校生活も、なかなか忙しく厳しいものだ。


 自転車のペダルを思いっきり踏んで、家へ向かう。背中のリュックが存在を主張する。それをなだめながら交互にバランスをうまくとり、ペダルをこぎ続ける。

 何かの花の香りを含んだ春の風が心地よい帰り道だった。

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