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衣織の物語  作者:
43/65

衣織の物語41「部活動紹介」演劇部3

 その後も何度か崩れかけのプレハブ部室を訪ねた私は、放課後はたいていそこにいる部長さんや、たまたまその日にいた部員さんたちに、演劇部の活動状況をリサーチした。


部長さん「演劇の大会は、春の地区発表会と秋のコンクールがあって、どちらも出場してる」

私「大会が年に2回あるんですね」

部長さん「そう、それでね、大会近くなると毎日放課後と土日に練習がある。それ以外のオフシーズンは、各自適宜練習してる」

私「ふだんはどうやって練習してるんですか?」

部長さん「部員と顧問の気が向けば(w)、文化祭での上演や自主公演も可能なんだけど、ふだんは気が向いた部員がこの部室にやってきて、自主練したり小道具を作ったりしてるんだ」

そう言って部長さんは、傾いているプレハブ内を見回した。

それにつられて私も、雑然とした部室を一周見回した。あいかわらずさまざまな雑多なモノが、不規則に置かれている。道具類を整然と分類・管理するという概念が、この部室にはない。私にとっては都合のいい場所だ。天井や壁にしみついているペンキの匂いが漂ってくる。

部長さん「春の発表会は生徒が好きなものを自由に上演できるんだけど、全国大会までつながる秋のコンクールは、顧問創作の作品を上演することが多い。既成の作品をやるよりも、創作・オリジナル作品を上演した方が、上位の大会に進みやすいからなんだ」

私「そーなんですね」

副部長「でも昨年は、部長創作の作品を上演したの」

私「部長さんが脚本を書いたんですか? すごいですね!」

簡単にまとめて言えばクマさんのような部長さんを、私はまぶしく眺めた。するとクマさんはちょっと照れた。

部長さん「そーでもないよ」

副部長「戦争がテーマだったんだけど、コンクールの審査員からは、戦争を戦いで終わらせようとするのではなくて、カメラマンの視点から反戦を訴えたところがすばらしいって講評されたの」

私「へ~」

いたく興味をそそられた私は、「部長さんの脚本を貸してください。私も読んでみたいです。ぜひ」と願い出た。

副部長さんは、「保存用の脚本があるはずだよ」と言って、山となっている書類の堆積物をガサガサ探し始めた。

副部長「確かにこの上の方にあったはずなんだけど……」

部室内にホコリが漂い始めたのに気づいた私は、「大丈夫です。今度、もし見つかったら、見せてください」と副部長さんに言った。

宝の山に名残を残し、副部長さんは元のイスに座った。

部長「それにしても、こんど、近いうちに、一度、大掃除しよう」

副部長「わかりました。みんなで協力してやりましょう」

静かに笑って見ていた遠藤先輩が続けた。

遠藤先輩「それから、お金の話なんだけど、毎月の部費は徴収していないかわりに、大会参加費や演劇連盟登録費は自己負担。道具類等は基本的に学校から出る部活動予算から支出するんだ」

私は、先日行われた生徒総会の資料を思い浮かべていた。そこには年間で2万円ほどしか演劇部予算は確保されてなかったはずだ。それでよくやっているものだ。

部長さん「少人数ということもあり、基本的に部員の仲は良いんだ」

副部長さん「ただし約一名は除く」

部長さん「そんなこと言わないの!」

はてなマークが顔に浮かんでいる私をよそに、部長さんは優しくたしなめた。

部長さん「その一名は今日も来てないんだけど、大会前は皆真剣に活動してる。ふだんはゆるいけど、よく言えばメリハリがついている部活だと思うよ」

副部長さん「そう言えないこともないね」

副部長さんは珍しくタメ口で言った。口先がちょっととがっている。くまさんはそれを優しく受け止めた。


 勉強ばかりじゃ飽きるだろうから、高校に入学したら何か新しいことをやってみたいと思っていた私は、以上を踏まえ、結局演劇部に入部することにした。

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