衣織の物語3「成績表事件」
こないだのママとのバトル。
私は低い机(「ちゃぶ台」というらしい)で勉強してる。ある日、座布団代わりのクッションの上に、1学期の成績表が置いてあった。ヤツの仕業だ。
早速、抗議のために一階に出向く。
私「ママ、成績表、黙って見たでしょ」
ママ「エッ、見てないわよ」
私「クッションの上にあったよ」
ママ「見てない」
私「前にも言ったよね。勝手に見ないでって」
ママ「だから、見てないってば」
私「ファイルに入れといたんだよ。それがクッションの上にあるって、変だよね」
ママ「見てないもん」
私「勝手に見ないでって言ってるのに、なんで見るかなー」
ママ「見られてまずいから隠すんじゃないの」
私「隠してないよ。見せるときにはちゃんと見せるよ」
ママ「大切な書類は、隠してないで、ちゃんと見せなさい」
私「見せてるじゃん」
ママ「見せてないよ。特に成績表は」
私「見せてる」
ママ「リビングのテーブルに置いといてって言ってるよね」
私「置いてるよ」
ママ「置いてないよ。最近」
私「置いてるよ。ちゃんと」
ママ「置いといてもらわないと、困るのよ。学校や成績のことが、わからないじゃん」
私「ちゃんと置いてるのに」
堂々巡りである。
これを聞かされるパパの表情は苦虫。そうしてパパは二階の自分の部屋にこもる。
後でパパに言われた。二人の会話は自己主張だけだと。互いにコミュニケーションをとって、問題を解決する方向には全く進まない。バトルの時間がもったいないと。
ちなみに、パパの理想のイメージは以下のとおりであるそうだ。
私「ママ、成績表見たでしょ」
ママ「見てないよ」
私「クッションの上にあったよ」
ママ「ママ、見てないよ」
私「ファイルにしまっておいたのに、なんでクッションの上にあるの」(疑わし気)
ママ「ほんとに見てないよ」(ほんとは見たよ)
私「ファイルの中の資料が、どーしてクッションまで移動するんだろ」(イヤミ)
ママ「自分で置き忘れたんじゃない? さっき勉強してる途中で、成績が気になって見た後に」
私「出してないもん」(確信)
ママ「大切な書類は、リビングのテーブルの上に置いといてね」(だませてるだろうか?)
私「今度は、書類自体に、テーブルの上まで歩いて行ってもらおう」(イヤミ、その2)
ママ「そうね、それがいいわね」(ばれてるような)
会話終了。
これが、オトナの会話だそうだ。私にはムリ。ママにも無理。ふたりともそんなタマじゃない。ピッチャーは直球をど真ん中に投げ、バッターはそれを素直にセンターに打ち返す。攻守交代しても同じこと。火花が散る。そばにいるパパはやけどする。