衣織の物語36「部活動紹介」柔道部
次は柔道部。皆さんお察しのとおり、これまたいかついやつらだ。耳がつぶれている。どうして? みんな体が大きくて、案外ポチャッとしてる。驚いたのは、柔道部の人って、意外に他のスポーツも上手であること。体育の時間にテニスやバレーをやらせると、確かに動きは鈍いが、そつなくこなす。テニスなんか、いつの間にかボール際まで来て、的確に相手に打ち返す。サーブには回転がかかってて、うまくリターンできない。バレーのレシーブは、まさに体ではじき返す。見た目と運動神経の良さが比例しない。大きな人でも、体に柔軟性があるからスポーツが上手なのかな?
お腹がすくのだろう、昼時の購買部前にたむろしているのは、これまたボーズ頭の柔道部だ。野球部が去ったあと、残りの食料を平らげている彼ら。そして、食べたものがすべて、お肉になる。軽量級の人は筋肉質だが、体が大きくなるにしたがって、雰囲気がお相撲さんに近くなる。
中学時代、私には柔道部の知り合いがいた。彼は小学生の頃、相撲をやっていて、町の小学生相撲大会で優勝していた。中学から柔道に転向し、足腰の強さからか、柔道も強かった。中三の時にはキャプテンになり、大会の団体戦では大将として戦っていた。彼こそ「気は優しくて力持ち」という言葉にぴったりな子で、「何か嫌なことがあったら、すぐ俺に言えよ。」といつも私を励ましてくれていた。だから、気の強い敵(女子)もいる中で、私がいわば無事に中学校生活を送ることができたのは、彼によるところが大きい。私がいじめられそうになると、彼がかばってくれたのだ。「俺が代わりにやっつけてやるから」、と言ってくれた彼には、今でも感謝している。彼の他にも、私を守ってくれる男子たちがいて、そーゆー意味では、私は恵まれていたと思う。こういう男子の頼れる部分に、魅力やすばらしさ、ありがたさを感じていた。だから今でもその子たちとは、たまに連絡を取り合って遊んだり、近所の公園でしゃべったりしている。それから、ゲームセンターに行ったり、よくみんなで通った駄菓子屋さんに行ったりするくらいだが、昔を懐かしみほのぼのとした気持ちになることができて幸せを感じる。よき仲間たちである。相撲をやっていた子とは進学した高校が違うのだが、高校でも柔道を続けているらしいので、機会があれば応援したいと素直に思う。
それで、うちの高校の柔道部なのだが、どーやら女子が一人いるらしく、練習パートナー役や、さらに言えば団体戦に出られるくらいの人数の部員募集を行っているらしい。うちの高校では体育で柔道をするので、新入生オリエンテーションの時に、私も柔道着を買った。実は、体育館で試着した自分の柔道着姿を見て、「我ながら似合うかも」と思ったのである。私は決して細身ではないが、そんなにふくよかなわけでもない(と、自分では思っている)。ちょっとお肉が多めかなとは思うし、身長もそれほど高くはないので、「ちんちくりんにならないといーが」と思ったのだが、道着の立ち姿は、まーまーだった。それで、ここから先がいかにも私らしくて恐縮なのだが、高校で柔道部もありかも、と思ったのである。昔、女子がやたらと活躍する柔道の漫画があったらしい。それに、体育館で行われた部活動紹介での、たった一人の女子部員の組手がカッコよかったのだ。立ち姿、受け身の取り方、男子を投げ飛ばす姿、そのどれもがキリリとしていて、でも無骨だったり荒々しかったりするのではなくて、しなやかでとにかくカッコよかった。洗練されており、上品ささえ感じた。力と力、技と技のぶつかり合いという印象があった柔道だったけど、彼女のような柔道もあるのだと思って感動した。私は、人を感動させるものに弱い。そうしてすぐに、自分もやってみたくなる。いろんなことにチャレンジしたいお年頃なのである。
それでね、もういっぱしの柔道家になったつもりで道場の門をたたいたのだが(体験入部ね)、一日目で挫折した。だって、受け身が痛いんだもの。慣れれば大丈夫になるのかな? 私は慣れないだろーなぁ。柔道って、受け身をクリアしなければ、次に進めないでしょ? やはり貴族の私に格闘技は無理だと悟ったのだ。柔道着を着た私の新たな魅力に幻惑される男子が現れるのではないかという妄想は、一日で消えた。為政者に必要な護身術としても使えるかなーと思ったんだけど、いままでのように周りの男子に護衛してもらえばいいか。男子の中には、気のいい人も中にはいるのだから。




