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衣織の物語  作者:
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衣織の物語29「塾2」~世の女子は恋バナが大好きだ。しかたがない、聞いてやろーではないか!~

 それで、塾の話なんだけど、通う塾が決まった。それで、ママが送り迎えしてくれるのも両者相互の利益を考慮して合意し、さっそく次の週から通うことになった。近所の塾は、部活動をやってる子が多いことに対応し、夜の7時から9時30分ぐらいの時間帯に授業があるところが多い。7時までは部活動というわけ。中学生は、ホントに忙しくて大変だ。

 でも、私の勝負の時間は、9時30分からだ。授業が終わっても先生に質問があるから9時45分ごろ迎えに来てとママには言い、実際は、塾のすぐ隣にあるコンビニで友人たちと談笑するのだ。時にはコーヒー(もう、飲める)、時には愛するお菓子を片手に、談笑に励む。よきかな。このくつろぎ。受験生には安息の時間が必要だ。いや、なければならぬ。死んじゃう。友人たちも口々にそう言う。情報交換の場なのだ。小学校の同級生男子が、今はこーなってる、とか、あの女子はあの子が好きみたい、とか、話は尽きない。滾々と湧いてくる。女子の話題には限りがない。主に恋の話が延々と続く。そういえば、こないだ行った日帰り温泉でも、おばちゃんたちの会話には果てというものがなかった。なんで女って、ペチャクチャ話すのだろう。話し続けるのだろう。意味も内容もない話を。飽きないのかしら? 飽きないのね。変な生き物。


 ママの話も長い。特に私への注意や説教は、ず―――っと続く。私も負けずに返すから、終わりがない。パパはあきれてる。時にウルサイと怒る。それでも母子の会話(言い争い)は続くのだった。


 友との楽しい談笑の話題だった。勉強に疲れ、高校受験という、このあたりの子にとっては初めての試練に立ち向かわんとするシステムに対するうっぷんややるせなさを持った者同士の語らいだ。恋バナにならないはずがない。逃避行動。逃避させて!


 以前も言ったとおり、私自身、恋にそれほど興味があるわけではない。しかし、他人の恋バナを否定・拒否するつもりもない。世の女子は恋バナが大好きだ。しかも自身の恋バナを他人に聞いてもらいたいと常に思っている。しかたがない、聞いてやろーではないか。私は拒まない。庶民の苦悩を受け入れる度量を持った私である。したがって、塾の女子たちは、次々と日替わりで私に恋バナ攻撃を仕掛けてくる。攻撃に対しては受け止める。よろこんで!


 それでも時に、小学校の時にちょっとだけ気になっていた男子が話題になることがある。その瞬間ドキッとするが、その感情は決して外には出さない。ポーカーフェイスである。ポーカーフェイスで心躍らせる。その子のことをちょっとだけ、みなさんに話してあげよう。

 その子はサッカーのスポーツ少年団に入っていた。アルアルである。リフティングの巧みさと、風に靡くちょっと茶色い髪が魅力的だった。アルアルである。でも、今では冷静に判断できる。チャラいと。チャラチャラすんなと。しかし、小学生女子なんて、スポーツに秀でているとか、身長が高いとか、ちょっと顔がいいとか、そんなことで簡単にあこがれの対象になる。してしまう。なぜか勉強ができる子は対象にならない。中学になると、勉強の良し悪しも男子のモテの評価基準になる不思議。

 それで、ちょっとイカした男子に、私も心がときめいた瞬間があったのだが、別々の中学になってしまった。で、その子が通ってる中学に行ってる子がいて、歓談の時間にその子が話題になった。さらにチャラくなっているそうだ。幻滅である。あの若い日のトキメキを返してほしいものだ。中学生までなってチャラいのは、おこちゃまである。大人にならなきゃ。私はコドモは相手にしない。ならない。だって、コドモなんだもの。私と優雅に語らう相手にはなりえない。残念だ。

 チャラくなったその男子は、当然チャラい女子と付き合ってるそーだ。あんなすきっぱが好きな女子もいるのだ(すきっばの人、ごめんなさい)。かつては私も好きだったかもしれない。そんな気がする。でも今は違う。以前パパに、「お前はすきっばが好きなのか?」と言われたことがあった。その時には、すきっばに対する冒とくだと思ったが、私の好意が明らかになる可能性を感じ、恐怖心からあえて反論はしないで言葉を濁しておいた。


 結局のところ、たわいもない話をあーでもないこーでもないとしゃべるのが、私たちのストレス発散になっているのだろう。その一方で、塾で私が何をどのように勉強しているのかが全く語られない今回の無駄話はいかがなものかと私自身思う。申し訳ない。


 前にも言ったけど、夏ごろ、志望校合格可能性がAになった。でも、その後Bに落ちてしまった。その後もBが続き、結局、第二志望校を受けることになった。私自身は、どちらでもいーかなーと思っていたのだが、第一志望校は勉強ができる子が多くて、授業内容が高度だとか、宿題があまり出されない(ほっとかれる)とか、生徒が掃除をあまりしないとか、その他いろいろな危惧があった。第二志望校は、宿題が多く出され、生徒に手をかけすぎるくらいだと聞いた。私はどちらかというと自分で計画を立てられないタイプだから、第二希望校の方があってるんじゃない? という両親の判断もあった。私もそれは納得した。


 でも、パパの表情は、ちょっと何かを考えてるようだった。だいぶ後になってパパは言った。難易度の高い高校がその子にとっていい高校とは限らない。その子にあった高校が、その子にとっていい高校なんだ。と。私もそう思った。それで、第二志望校を受験することになった。実はパパの出身校は、私の第一志望校だった。パパはおそらく、私がパパと同じ学校に行けないことに対して、ある感情を持つのではないかと心配したのだろう。私自身、気持ちがちゃんと整理されてすっきりした気持ちで受験に臨んだかというと、そうとは言い切れない部分も確かにある。でも、自分でもよく考えた上での判断なので、これでいいのではないかと思った。そういう気持ちで、冬は勉強に励んだ。

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