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衣織の物語  作者:
18/41

衣織の物語17「浪江町1」~「3つとも大盛で」とパパが言ってくれたので、あえて訂正はしないでおいた~

 土曜日に、浪江町に行くことになった。この突然の浪江行きは、ちょうど紅葉の季節だし、受験勉強の気晴らしということで、ここのところ鬱々としている私への気遣いで決まったのだろう。パパとママの心遣い、ありがたいことである。口には出さないけど。


 ということで、金曜日の朝の目覚めは、久しぶりに快適なものとなった。明日はドライブである。イベントには目がない私だ。行先には、おいしいスパゲッティ屋さんが待っている。前日からウキウキ。顔には出さないけど。悟られるのがシャクだから。


 このスパゲッティ屋さんというのは(なんか、話がズレだしたゾ)、私が小学生の時に出場したピアノコンクールが南相馬という所で行われ、大会結果の発表までの待ち時間に寄った店だ。ここのスパゲッティはかなりうまかった(ハシタナイ)。ほんとに人生で一番おいしかった。その時私が頼んだのは、カルボナーラだったけど、よくあるドロドロしてるとか、反対に水っぽいとかじゃなくて、ちょうどいい加減だった。絶妙な生クリーム。クリームが臭くない。アルデンテに茹でられたパスタにおいしいクリームがまぶされ、その上に粗挽きの黒コショウがたくさんかかってた。食べる前は、辛いんじゃない? って思ったけど、食べたらそれがアクセントとなっており、パスタとクリームと具材と、えもいわれぬハーモニーを醸し出していた。細長く刻まれたベーコンも、ちょうどいい塩加減だった。つまり、完璧だったのだ。大盛無料だし。パパとママに、大盛無料だよって言われて、貴族としてはややためらいがあったけど、注文の時に「3つとも、大盛で」とパパが言ってくれたので、あえて訂正はしないでおいた。下僕の対外的な交渉に、口は出さない私である。


 私が浪江行きを決心したのは、べつに、そのスパゲッティに釣られたわけではない。決して! 十年ぶりに、わが故郷に帰ってみたいと思ったからである。受験勉強に疲れてる。青春という困難な時期をともに悩みつつ歩む友人たちの相談にも乗らなければならない、忙しい毎日だ。とにかく、中学校生活はなにもかもが大変気ぜわしく忙しい。たまには気晴らしが必要だ。

 下僕の心遣いには、黙って従う私である。

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