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衣織の物語  作者:
14/41

衣織の物語13「後期中間テスト1」

 来週から始まる後期中間テスト。テストというものは、いかに将来の為政者である私といえどもイヤなものだ。確かに世情、好きですねついては知らねばならぬ。知識の無い者はバカにされる。暴君と呼ばれる恐れがある。それは避けなければならない。


行事は、いつの間にかやってきて、機械的に通り過ぎていく。楽しいものでも、イヤなものでも。そういうところが、「時間」の嫌いなところでもあり、良いところでもある。


 それで、テスト勉強だけど、人生において計画性などという概念がない私にとって、その場の雰囲気とか気分でこなしていくイベントの一つだ。たまに、思い出したように深夜まで猛勉強に励んだかと思うと、「今日は休憩」と言って、早めに寝てしまうこともある。そんなところがママとパパの信頼が得られない部分なのだろう。私のテスト勉強に励む姿は、どーやら家庭の幸福と平和につながるらしい。みんなのうちはどーなんだろ? 学習の果実が、私の人としての成長となって現れることよりも、ただ単に、勉強している姿を見ることによるパパとママの精神のリラクゼーション効果に重きが置かれているかのようなこの状況は、いかがなものかと思う。(なんか、自分でも言ってることがわからなくなってきた。ま、いいか)


 つまり、簡単に言うと、何のためにベンキョーするんだろってことになる。その目的、終着点(あるかどうか知らんが)、それが、ことベンキョ―においては、はなはだアイマイで見えてこない。それがうちら中学生にはツライ。愚か者ほど、目の前のソッコーテキでオイシソウナ結果をすぐに欲しがる。(私はちょっと違うけど) 努力の結果が欲しいのだ。でも、努力したからといって、必ず良い結果が出るとは限らない。出ないときもあるし、ほんのちょっとだけ出るときもある。そこがモドカシイ。イヤになる。

 でも、ほとんどの中学生は、そんなことすら考えず、ただ「ベンキョ―、メンドクセー」の一語なのだろう。愚かだと考える。何でも、初めはつらいものだ。その面白みがわかるのは、頑張った後にやってくるご褒美のようなものだ。私は今回の受験勉強で、そのことを理解したように思う。頑張った成果は、本当に頑張った人にしかやってこない。あらわれない。我慢が必要だ。確かに眠いかもしれないけど、テスト前の自習時間を教室で寝て過ごす人間に、私はなりたくない。時間の無駄だ。非効率的だ。先生に悪いからではない。自分に悪い。それに気が付かない人がとても多いのは、この国の衰退につながるだろう。それは将来の為政者として見過ごせぬ。

だから私は、今までよりもチョット真剣に、勉強に取り組んでいる。大人になったかなー?


 以上のような理由と経緯から、後期中間テストの勉強にケナゲに励む私なのだが、放課後の教室は、クラスの人たちが一時(いっとき)それを忘れたみたいに騒ぐ。とにかく騒ぐ。うるさい。ベンキョーせよ、って感じ。でも、彼女たちもあたかもテストを忘れ去ったふりをしているだけかもしれない。逃避行動か? その気持ちはわかるが、わたしゃベンキョーしたいのだ。させてくれ。

しょうがない、場所を変えるか、と、喧騒の教室を抜け出てローカをとぼとぼ歩いていると、向こうからさらにウルサイ人がやってくるのに出くわした。高めに結んだポニーテールが、その子のトレードマークであり、当人は、自身のことを、「元気なよい子」と思っている。確かにそのカケラはあるかもしれない。でも、周りにとっては、ほぼ、ウルサイコだ。一人で、さっきの一クラス分ぐらいの勢いがある。

彼女「私さん、モー帰り?」(私の肩をバチン)

私「(声が大きい)うん、ベンキョー場所変えようと思って」(肩が痛い)

彼女「そうなんだ。じゃ、ちょっと寄ってかない?」

 そう言って彼女は、右手をクイッとした。オヤジが酒を飲むしぐさだが、中学生である。

私「イーネェ、ベンキョーも疲れたし、軽く行っとこうか?」

 オヤジである。退勤時間のオヤジどうしの会話だ。しかし彼女にノッテあげたのだ。

彼女「どこいこーか?」

私「いつものとこにする?」

彼女「そだね。じゃあ、カバン持ってくる」

私「オーケー!」

 テスト勉強がどっかに行ってしまってることは、私も知っている。しかし中学生にも付き合いというものがある。荒廃した教室から逃れるべく、魅惑の甘い飲み物が待つオアシスへと、我々は向かった。

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