99、真相
「……残念ながらそんなものはないわ。そもそも単独で侵入したし、証言してくれる人はおそらくホーリンだけだけど、亡くなってしまったし……」
喋りながら、私は肩を落とす。録音機でも持っていけばよかったとつくづく後悔した。
「……」
珍しくルーランは言い返してこないが、明らかに「それ見たことか」とでもいうような嘲りを含む視線を投げつけてくる。だが、ここは踏ん張りどころだ。私は気持ちを切り替え、息を吸い込んだ。
「今から、昨晩何があったのかをあなたに正確に伝える。だからそれをよく聞いて吟味した上で判断してちょうだい。神に……いえ、悪魔に誓って、決して嘘はつかないわ」
元より神などひとつも信じてはいないが、悪魔は常に身近な存在だ。私の相手の心臓を射抜くような真剣な眼差しを、ルーランはルビーのような真紅の瞳で見つめ返した。しばしそのままの状態が続くも、根負けしたのか、それとも私の誠意を認めたのか、彼女は小さくうなずいた。
昨晩三時頃、ピンク色のナース服に着替えた私は、噂の病院カーを訪れた。病院カーは想像していたトレーラーハウスのやや大きいものなんぞよりも遥かにでかい形態で、3、4階建ての小型ビルくらいの建物が巨大ダンプカー(イ〇オスのアキレスが高速道路で逆走してた奴サイズ)の上に乗っている感じのぶっ飛んだ代物で、ホールの隅に停車していた。幸い深夜のせいもあってか周囲に人影は見えず、私は堂々と闊歩しながら裏口へと回った。
(ええっと……確か「9393」だっけ?)
ドアの横のパネルにバルコーゼから聞いた4桁の暗証番号を打ち込むとドアは音も無く開いたため、内側に足を踏み入れた。
出入り口のドアは廊下へと繋がっており、部屋を探し出すのに手間どうかと思ったが、入ってすぐそばに「集中治療室」の札がかかったドアがあったため、私は一人にんまりとした。まずはミッション第一段階クリアだ。