97、ノリノリ
言い争っているうちに、ミサイルはファイヤーウォールを突破し轟音と共にホールの天井に突き刺さる。そこには……。
「ま、まさかあなた、そんなことを企んでいたの!? 噓でしょ!?」
ようやく私の目的を悟ったルーランが血相を変えたのが通話越しにも感じ取られた。
「ええ、あそこに何があるのかはよくご存じよね。何しろ昨晩一緒にあの場所で裸のド付き合いした仲だもんねー、パールピンク乳首さん。つまり……」
私はここぞとばかりにダメ押しする。そう、このホールの最上部にあるのは、あの水着着用義務があるスーパー銭湯なのであった。つまり、そこを下から狙い撃ちした、ということは……。
「当然こうなるってことよおおおおおお!」
私の勝利の雄たけびと共に、上空から雨が降り注ぐ。もちろん炎の雨ではない。せっかく特別に作ってくれたドパコール社には悪いけど、湯舟を破壊されたことによって浴槽に溜まっていた昨日の残り湯が流れ落ちてきた、というわけだ。恵みの雨は溶鉱炉のごとく燃え盛る縦穴を潤し、まるでスプリンクラーのように火災を消し止めていった。
「あーっと、センナ選手、相変わらずエグい作戦で見事ルーラン選手の火炎攻撃を阻止しました! さすが悪役令嬢なだけはあります! 幸い風呂場に人はいませんでしたが、一体この悪魔的発想はどこから来るのでしょうか!?」
アナウンサーのノリノリの実況がいちいち癇に障るが、客商売だと思って気にしないことにする。
『なんかもうこれテロリストが裸足で逃げ出すほどの破壊工作振りじゃない!?』『昨日の貨物船墜落も悪役令嬢さんの仕業でしょ? 俺の注文したリアルラブドールがなんかえらいことになってたけど』『あれ注文したのお前かよ!?』『それよりも現場すげえ熱そうだけど皆水分補給してるの!? 最近の母乳系エロ漫画でも乱交中の水分補給はスタンダードよ!』
相変わらずコメント野郎どももノリノリであった。