94、花火
小さい頃、花火をコロニー内の巨大ホール内で見たことがあり、それはそれは綺麗なものだったが、発射台からあまりにも至近距離のかぶりつき席だったせいか火花やら炭やらなんやらがまともに降りかかってきて手にしたジュースの紙コップにホールインワンしてギャアギャア泣きわめきながらアロエにあやされた思い出がある。現在の状況はそれを一万倍くらいひどくしたような代物で、煙と刺激臭が充満し、とてもコロニー内でやっていいレベルの出し物ではなかった。
「あんたこのまま続けるとコロニーが大火災を起こしてお尋ね者になるわよ! だからプリーズリッスントゥーミー! そりゃ病院内に忍び込んだのは確かだけど、私がそんなことするわけないじゃないの! 頭冷やしてよーく考えなさい!」
「問答無用! 御託を述べるのはこの妾に勝ってからにしてくださいませ! ファイヤァァァァァァァ!スルピリドスルピリドスルピリド!」
私は説得を続けるも、怒り心頭に達した放火魔には逆効果で、奴は上側の地の利を活用し、全てを焼き尽くす地獄の炎を無尽蔵に生み出し続け、ナイアガラの大瀑布もかくやという真っ赤な滝を顕現させる。
相変わらずのノーコン振りだけが救いだったが、それでも数で押してくるだけはあり、他のOBSの中には運悪く流れ弾に当たって燃えながら落下していく機体もあった。敵が減る分には良いんだけど、明日は我が身なのであまり心地よい見世物ではない。
「もうまったく回りが見えてないわね……こんなのどうすればいいのよ!?」
私は頬杖をついて考えこむ。もはやなりふり構っていない暴挙であり、正気とは思えない。
「お嬢様! 炎対策を講じなけれなければさすがに避け切れません! 早くご指示を!」
「うがあああああああ!こっちは寝起きだっつーのに、対策が簡単にわかりゃ苦労しないわよ! 本当にクソしつこい奴ね!」
私は泣き言を並べ立てた。