93、変貌
号令一下、18機のOBSは次々と大きく口を開けた縦穴に向かって飛び出していく。中は薄汚れた灰色の壁で囲まれ、一応所々に灯りは灯っているものの中は薄暗く、まさに地獄に向かう黄泉平坂のようだ。さっきの作戦通り、私はなるべく後で行こうとギリギリまで大穴のふちに佇んでいたが、ふいに何者かに機体の背中をポンと押され、コントよろしくその場でたたらを踏むも、結局重力の法則に負けて自由落下の旅に出た。
「ルーラン、あんたいきなり何すんのよ!?」
私は背後も見ずに魔動力通信で怒鳴り散らす。位置取りと言い犯人の機体の手の高さといい、こんなことやれる奴は一人しかいない。
「『何すんのよ!?』ですって!? それはこちらの台詞ですわ、センナ・ニフレック・ピコスルファート! よくもよくもよくも我が最愛の友人であるホーリンを殺してくれましたわね! このド腐れド外道のド悪役令嬢めが! 今度という今度は、たとえ大宇宙が許しても、このルーラン・モイゼルトが絶対に許しませんわよ! この身と引き換えにしようとも、あなたをこの地上から滅殺し、素粒子以下に変えて差し上げますわ! 友の鎮魂のために!」
「うっ」
かつてないくらいの憎悪と憤怒にまみれたお返事が即座に呪詛のように紡ぎ出され、私は気圧された。もはやその熱量は昨日の比ではない。
「ちょっと私の言い分も聞きなさいよ! あんた勘違いしているだけだって! オ○ニーでもして少し落ち着いた方がいいわよ!」
「うおおおおおおおおおおおスルピリドスルピリドスルピリドスルピリドスルピリドスルピリドォォォォォォ!」
いくら言葉を尽くしてもルーランの耳には欠片も届いていない様子で、人間を捨て悪鬼羅刹のごとき復讐の鬼と化した彼女が、昨日にも倍するほどの火炎弾を大量生産して、視界を真っ赤に染め上げる。もはやうっかりカウントダウンTVSEXNTRオホ声お嬢様とか人工ピンク乳首野郎とかからかえないほどのありさまだった。