91、二度目のスタート
「では、いよいよレース二日目の説明をいたします! まず選手の皆さんは目の前のグレートホールを下降して、コロニーの第二層まで下っていただきます。そして中を探索し、チェックポイントを通過して、二日目のゴールに午前零時までにたどり着いてください! もちろん今回もお助けアイテムが用意してありますが、思わぬところに隠されており、そしてその分障害もありますよ~しょうがないですけどね。敵とかいるかもしれませんが適当に戦えばなんとかなるかも?」
「むぐぐぐぐ……!」
「お嬢様! 突っ込みは堪えてください! 一々きりがありません!」
「わかってるわよ! でも敵って何かしら? ただでさえ回り中敵なのに」
「さあ……例えば攻撃型ドローンなどかもしれませんね。武器などを装備してレースの邪魔をしてくるのではないでしょうか?」
昨晩私よりよく寝たせいか、アロエの頭は冴え渡っていた。
「なるほど、そいつは厄介ね。まあいいわ、たとえモアイがイオンリング吐いてきたとしても皆殺しにしてやるわ!」
『例えが古すぎる……おっと、ナンデモナイデス』
脳みそ君も会話に参加してきたが、一瞥で黙らせてやった。こいつは甘やかしてはダメだ。
「それにしても、この垂直な穴を下降するのって危険極まりないわね。後ろの奴に狙われたらひとたまりもないわよ」
「なるべく最初は後方で様子を見た方がよろしいかもしれませんね……」
アロエとコソコソ相談しているうちにも、説明はオヤジギャグを挟んで軽快に進んでいった。
「さあ、皆さん張り切ってシンデレラを目指しましょう! でも気がついたらいつの間にか死んでれらーではダメですよ!」
「うがあああああああああああ実際に死人が出ているのに昨日とまったく同じギャグをやる神経が今一理解出来ん!」
「だから我慢してくださいお嬢様! もうスタートに集中しましょう!」
アロエにたしなめられ、何とか理性を取り戻す。本当にこのCEOとは馬が合わない。
「それではスタート! グッドラック!」
昨日同様号砲が鳴り響くと同時に大歓声と拍手と魔動力エンジン音の大合唱が生じ、脱兎のごとく各機体は飛び出していった。