87、宣言
さて、4位以下は、昨日の開会式で見かけた緑色の孔雀を筆頭に、蜘蛛だの蛇だの何だの、キモい形状で男子が好きそうなOBSばかりゾロゾロ連なっていた。とはいえ皆約二分の一の狭き門を潜り抜けたわけだから、おそらく一筋縄ではいかないだろう。一体全体どんな能力を秘めているのやら。
その時カチっという音と共に、会場の時計の針が十時を指した。途端にファンファーレが高らかに鳴り響き、壇上に赤いスーツ姿の女子アナが登場した。
「皆様大変長らくお待たせいたしました! では、十時になりましたので、ただ今よりSDAGオーラ杯二日目を開始いたします!」
盛大な拍手とざわめきの中で、昨日やや偏った報道をしていた女子アナが華やかに声を張り上げて宣言する。なんか前日よりも気合入ってるぞあいつ……ヘソ出してるし。
「ですが、本日のルール説明の前に、昨日、否、本日未明に亡くなった選手のために、一分間の黙とうを捧げたいと思います。すみませんが会場の皆様、ご起立をお願いします。では、チガソンCEO、どうぞ!」
急にさっきまでとは180度違う沈痛な声音でヘソ出しアナがアナウンスしたため、会場の空気は突如葬儀場のそれに一変する。
女子アナの背後から、突如黒スーツでオールバック姿の男性が姿を現し、マイクをサッと奪い取る。ドパコール社のCEOことチガソン・ドパコールだ。ちゃんと会場のマイクを掴んでいるところを見ると、あれは立体映像ではないのだろう。昨日よりは幾分真面目にも思われる。
「ああああああああああ嗚呼……」
私はみぞおちのあたりがキュッと締めつけられるような気分になり、なんだか吐き気がしてきた。ついに恐れていた時がやってきたのだ。一刻も早くこの場から逃げ出したくてたまらない。
「では皆様静粛に! 儚くも16歳の生を全うされたホーリン・ロピニロール選手に黙とう!」
チガソンの一声が残酷に私の胸を貫いた。