83、作戦
だが、それは様々な問題を抱えるいばらの道だった。歴史あるピコスルファート家には代々続くある掟があった。曰く、「当家の当主となる者には、必ず次世代の後継者がいなくてはならない」とある。つまりは子持ちである必要がある、というわけだ。うーむ……。
我が家は代々早婚の家系だそうだが、こんな妙な家訓があるためだろう。もっとも出生率がつるべ落とし並みの速度で低下している昨今では、仕方がないとも言える。
どうしても子宝に恵まれない場合は養子を取るのもやむを得ないが、もちろん血のつながった子供がいるのに越したことは無い。また、女性が当主になることは前例がないわけではないが、もちろんピコスルファートの名字を持つことが前提条件である。よって、婿をとらねばならない。この二つが難点だった。
(まったく、このバカがよけいなことさえしなければ……)
私の場合、どうにかこうにかアローゼンをなだめすかして婿養子に来てもらうところまでは漕ぎつけたのだが、現在水槽内でクラゲみたいに漂っている生ゴミ候補の有機物の固まり野郎はこともあろうにこの私を婚約破棄しやがった。
まあ、その報いを受けて現在このような姿になり果てたのだから溜飲が下がる思いがしたものだ。婚約に関しては、こんな雑魚は放っておいて、婿はまた一から探せばいいが、私自身は宇宙腫瘍という厄介な不妊症に侵されている。よって治療が先決、というわけだ。
ただし、たとえ病気が完治して婿も決まってめでたく子供が成せたとしても、目の上のたん瘤である父が邪魔だが、その頃にはさすがに今よりパワーダウンしているだろうし、親族の者たちをこちらの味方につけて説得させ、当主の座から引きずりおろせばよい。そうすれば晴れてアロエはくびきを解かれて父へのしがらみから自由の身となる、という作戦であった。