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81/135

81、勝利

「く、馬鹿な! どういうことだ!? ひょっとして魔法か!?」


 幻の姫は床に這いつくばりながら怒鳴りました。倒れる瞬間メイドが何かつぶやいたのを耳にしたからです。


「あら、今頃おわかりになりました、幻の姫? 私は大地の国の姫です。始めまして。以後よろしくお願いいたします」


「貴様、メイドに化けて潜入したのか!? 悪魔と一体化したと聞いていたが、じゃああそこに突っ立っているのは何なんだ!?」


 激昂した幻の姫は人差し指で窓の向こうに聳えたつ巨大な黒い影を指しました。


「別に一体化したと言っても分かれることは自由に出来るわ。ここの兵隊さん達は城の正面の方に気を取られて背後が完全にお留守だったので、大地の魔法を使って城壁を登ったら楽に忍び込めたわ。それにしても内部に関してはだいぶ警戒がザルのようね、この城は。外から侵入されることがなかったせいか、少しも怪しまれなかったわよ」


「何だと!? クソ、卑怯な手を使いおって!」


「あなたの幻影魔法の方がよっぽど卑怯だと思うけどね。そんなのにばかり頼っているから、いざ自分が騙される側に回ると簡単に引っかかっちゃうのよ」


「……!」


 幻の姫はぐうの音も出ませんでした。戦意喪失した彼女をお姫様は手際よく縛ると、塔の窓から両軍に堂々と勝利宣言を行いました。


 ・ ・ ・


「ねぇ、アロエ、またお話して!」


「はいはい、お嬢様」


 幼い時、アロエは毎晩私に添い寝しながら物語を話してくれた。よくまあそれだけの数を知っているわと驚くほどのバリエーションがあったが、なかでも私がお気に入りだったのは、お姫様と悪魔が結託して周囲の国を乗っ取っていく物語。けっこう長い話だったので、聞いているうちにうとうとしてくるのが常だったが、それでもしょっちゅうせがんでは何回もしてもらったものだ。


「お嬢様、もうお休みになられましたか?」


 私が寝ついたのを確認すると、彼女は一人そっとベッドを抜け出して、隣り部屋の父の寝室へと向かっていった。狸寝入りをしていた私は、いつも彼女の様子をうかがっていたのだ。

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