79、ドパコール社
「つけあがるからよ、たかが脳髄デバイスの分際で。身の程をわきまえなさい。で、どうしてなのよ?夜も遅いんだし早く答えなさい」
私は女王陛下よろしくふんぞり返って冷徹に命令を下しながらも、またもやチューブが空になったためローション注入をストップする。きっと明け方には朝焼けの空と同じくらいピンク色の脳細胞と化していることだろう。
『なんか身体中っていうか脳全体がおっぱいになったような感覚に襲われたけど、自分でも何言ってるのかよくわからないよ! んで、OBSっていうのはそもそも機体の製造自体は全てドパコール社が占有して行っているんだけど、その製法は特許のベールに包まれ、謎と言われている。でも材料は金属だけじゃないのは火を見るよりも明らかで、何か特殊なバイオ技術による、未知の生物か何かと鉱物とのハイブリッドじゃないかなんて噂されているんだ』
「ほほう……」
私は今まで出会ってきたOBSの数々を脳裏に思い浮かべる。確かにロボットと一括りにするには、あまりにも様々な形状の面々がいた気がする。特にホーリンの巨大クラゲなんぞ、どう見ても生物由来の何かだった。
「なるほど、要は訳ありってことね。面白いじゃないの。しっかし食品やら医療やらロボットやら、本当にやけに手広く商売しているわね、ドパコール社って」
『さっきの対戦相手を速攻で眠らせるマジカルステッキだって、何気にオーパーツ並みのウルトラスーパーアイテムだしな……正直言って謎が多くて自分も気になる点が多い。今日だけを見てもわかると思うけど、たかが一レースに必要以上にすげえ金かけてやがる。自社の広告効果があるにしても、絶対採算度外視だぞ、これ。一体何を考えているんだか……うーむ』
脳みそ君、否、アローゼンが、怪しげなローションに浸かりながらも、名探偵よろしく真剣に考察している姿は中々見ものだった。悔しいけどこいつ、頭は悪くはないんだよなあ……。