75、面会
「レースはどうなったのよ!?」
「もちろん失格扱いさ。結局時間までにゴールイン出来なかったんだし、仕方ないさ。まあ、命があるだけでも儲けものだとは思うけど」
私の中の、自分でも存在を疑っていた良心がジンと痛んだ。ここは是非とも彼女に会わねばならない。万難を排しても。何故なら私には、そうするだけの理由がある!
「行ったら彼女に会えるの!?」
「当然面会謝絶だろう。喋ることが出来るかどうかも怪しいもんさ。今晩は無理に行かなくてもいいと思うよ」
「でも……これって、私のせいで?」
つい、情けないことを尋ねてしまう。どう見てもそうだろうがと心の客観的などこかがセルフ突っ込みをするが、やはり他人のジャッジを仰ぎたかった。許しを得たかったのだ。
「まあ、確かに君があの場面で重力魔法を使って宇宙船メテオを敢行したのが直接原因ではあるよね。普通思いついてもあそこまでやるもんかねって声はネットで上がっているよ」
「あああああああああああ嗚呼!」
耐え切れなくなった私は湯舟に顔をうずめるようにして一人嘆く。口元から無数の泡が躍り出て、湯気と共に儚く消えていった。
「おいおい、悪役令嬢らしくないじゃないか、センナ君。もっと折れない心を持ってないとこの先辛いぞ。まあ、相手方だって君たちを生きたままBBQしようとしてたんだし、正直言ってお互い様だと僕は思うね。それにあの時、ホーリン君には瓦礫に埋もれた相方をさっさと見捨てて一人で先に行くって選択肢もあった。それをしなかったのはひとえに彼女の青さであり、責任さ。君も同じようなことが起こる前に、ここらへんで早めにリタイアした方が今後のためだと僕は進言するね。命あっての物種だよ」
「うるさいわ! こちとらどーせ友達少ないからお気遣いご無用よ! それよりも何とかホーリンと面会する方法はないの!? 人の婚約者奪った責任取れや!」
私はここぞとばかりに文句を垂れて無茶ぶりした。