74、衝撃
「しかしよくよく占いと縁のある家庭ね、ルーランのところは」
私は彼女とホーリンのタッグチームに翻弄された苦々しい記憶を脳内で嚙み締めた。
「あの二人も興味深い関係だけどね……ところで君にとってショッキングなニュースかもしれないが、ホーリン君が……」
そこで今まで軽快に口を滑らせてきたバルコーゼが一旦言葉を切り、湯舟に落ちるしずくの音だけがピチャンと木魂する。私は最後にホーリンを見たときのことを唐突にフラッシュバックする。そうだ、彼女の操る【プロベラ】は破裂寸前の水風船のごとく膨らみ、落下してくる宇宙船を丸ごと受け止めたのだ。普通に考えればとても無事で済むわけがない。レースの疲れや、銭湯でのルーランとの小競り合いや、バルコーゼとの無駄話のせいですっかり失念していた。
「ホーリンがどうしたの!?」
「安心したまえ、一応生きてはいるよ。もっとも機体の方は完全にオシャカになったけどね。宇宙船や瓦礫に押しつぶされて見る影もないよ。彼女自身もあわやというところでなんとかかろうじて脱出に成功したそうだ。ただし……」
またもや訪れる深い沈黙。どう考えてもよい知らせではあり得ない。まだそんなに長湯もしてないのに、のぼせたかと疑うほど私の脳が熱を帯びてクラクラする。
「もったいぶらずに早く言ってよ! 気になるじゃない!」
「わかった。ホーリン君は全身打撲で骨折も数十ヶ所にも及び、臓器も幾つか損傷し、特に肺には折れた肋骨が刺さって気胸を起こし、今集中治療室に入っていると推察される」
バルコーゼはわざとか、感情を押し殺した声で極めて静かに語ったが、それでもその衝撃は私の全身を貫いた。あまりのことに意識が飛びそうになるが、なんとか踏ん張って質問した。
「集中治療室なんてこの近くにあるわけ!?」
「このホールのすぐそばに、大型の病院カーが停泊中なんだよ。怪我人は他にもいるし、絶対必要だからって前もって用意されていたんだね」
バルコーゼは淡々と語った。