68、忠告
「言っておくけどあんなにいがみ合っていたルーラン君とメマリー君だって和解してるんだよ。少しは見習ったらどうだい?」
「ええっ!? いつの間に!?」
予想外の台詞に私は驚愕し、たった今ピシャンと音を立てて閉まったドアを指さした。
「考えてみたまえ。あの後ゴール間際で争い続けても決着がつかなかったらどうなると思う? めでたく二人とも枕を並べて討ち死にじゃなくて失格じゃないか。そうと悟った彼女たちは戦闘の真っ最中にもかかわらずこんなことやってる場合じゃないと判断し、一旦バトルを中止して天翔る龍の閃き並みの猛追い上げで君の後を追撃した、というわけだ。中々策士じゃないか」
「へぇ~、確かにその通りだけど、よくあの状態から理性的な判断が出来たものね」
「そこが駆け引きってやつさ。いいかい、敵を増やすだけじゃこのレースには勝てないよ。正直言って君の戦い方は独特で面白かったけど、この先更に苛酷になる試合にはついていけないだろう。確かに僕の一次試験は合格したけれどここらへんでリタイアした方が無難だと思う」
これにはさすがの私も切れそうになり、こいつのよくわからんグラビアでしか見ないような水着をひん剥いて、噂の陥没乳頭を公共の場に晒してやろうかというどす黒い感情が群雲のように沸き上がってきた。
「よけいなお世話よ! 友達少ないのは昔からだから慣れっこ動物よ! てか何よその変形水着!?」
「おお、よくぞ聞いてくれた、センナ君! この水着はドパコール社特製の世界に一着しかない逸品で、アルファベットのBをデザインしたものなんだ。つまり僕のイニシャルだね」
彼女はBの上の二本の線に挟まれた大きな胸を張って嬉しそうに答えた。さよか。
「どうでもいいわ! それよりもさっき戦ったくせしてあまり絡んでこないでよ! あんたが私の彼氏を奪ったことは許し難い卑劣な唾棄すべき行いなんだからね! あんたの両胸の噴火口もピンク色に変えてやろうか!?」
私は新たな二本目のチューブをお風呂セットから取り出すと、奴の眼前に突きつけた。