63、ハンティングトロフィー
「きゃああああああああああああ!」
魔法によって生じた天からの濁流に押し流された焔の姫は、城壁の上から虚空に向かって投げ出されました。
「おい、お姫様! あいつを死なせちゃいけねーぜ! 使い道が色々あるからな!」
「わかったわ! 任せてちょうだい!」
忠告に従って、お姫様は巨大な悪魔の手を操作して、あわや海面に転落しそうになった焔の姫を寸前でキャッチしました。
「さあ、負けたのだし、命も助けてあげたんだから大人しく私に従いなさい! さもないと、あなたの王国の民がどうなるか、わかるわよね?」
お姫様はもう一度魔法を発動させる真似をしました。恐らくそんなことをすればこの城と中の住人はただでは済まないでしょう。
「わ……わかったわ。負けを認めます。くやしいけれど言うことを聞くわ」
「あら、意外と物分かりが速いわね。じゃあ、今から私の一部と化しなさい! 合体よ!」
お姫様はそう言うと、焔の姫を悪魔の胸元に足先から突き刺しました。彼女はまるで畑に植えた苗木のように深々と黒い体内に飲み込まれて行き、やがて両肩と頭だけを突き出した状態となりました。何だか瞳はどんよりと濁っており、口も半開きです。
「まるで私の部屋の壁に飾ってある鹿の首の剥製みたいね。あれって物掛けに丁度よいんだけど」
「まあ、ある意味これもハンティングトロフィーだしな。ろにかくこれでお前さんは焔の姫の魔法を使えるようになったし、彼女の生き死にもこっちの思うがままだ。良かったな」
「すごいじゃない! 火炎魔法って一回使って見たかったのよね! タバコがすぐ吸えるじゃない!」
「そいつは大人になってからにしてくれ。さて、それじゃ次の王国に向かうぞ」
「よし、いつでもいいわよ! おっと、だがその前にこういうのはどうかしら?」
こうしてお姫様は悪魔に次なる作戦を提案しました。
「なるほど、それはかなり面白そうだな」
悪魔もにんまりと笑みを浮かべました。どうやらお姫様の心まで悪魔との一体化が進行している様子です。
遂に弾が尽きたのですみませんが三日間お休みをください!次回更新は7月3日予定です!では。