59、南極
チェックポイントからゴールまでは一本道となっており、追い越しがあればすぐわかるはずだ。少し眠っていたとはいえ、アロエの目をごまかせるほどOBSは小さくない。
「ハッ! さすが箱入りボンボンお嬢様はおつむの中がお花畑だな! さっきも俺様とバトったくせに、まだわからないのかよ!? このスーパー原付じゃなかった【タイオゼット】が壁に擬態出来るのを今もその目で見たじゃねぇか!?」
「そうか! 壁に化けて素通りしていったのね! なんて卑劣かつ面倒くさいやつ!」
「うるせえ! お前らがド派手な火遊びやってたもんで、その隙にスネーク大佐もびっくりのスニーキング殺法でスイスイ進めて拍子抜けしたもんだよ! まったく笑えるぜ、ハーッハッハッハッハッ!」
「な、何よ、そっちこそ火事場泥棒じゃない!」
「それ意味違うだろうが! もう一発食らいやがれ!」
怒った奴は再度サイコロ穴からミサイルを射出してくる。慌てて避けるもバーニアがいかれているため上手くいかず、またもや当たってしまう。今度は右腕だ。
「くっ!」
ついしかめっ面をしてしまう。ここまで来て、こんなチンケな罠にはまってお陀仏とは目も当てられない。
「アロエ! こっちもミサイル撃てないの!?」
「残念ながら既に弾切れです、お嬢様」
「うがあああああああ! 使えねえ!」
私は必至で頭を捻る。助かる術があるとすれば……。
「ええい、あんたなんかこれで充分よ!」
思わず【ラキソベロン】の左手に握っていたものを相手目がけてぶん投げる。少しでも意表を突くにはこれしかない。案の定油断しきっていたメマリーの機体にそれはいとも簡単に命中した。
「な、何投げてきやがった!? 人形……!? って南極一号じゃねえかよこれ!?」
「あんたいつの時代の人間よ! 今じゃ南極一号でもダッチワイフでもセクサロイドでもなくてリアルラブドールって言うのよ!」
「何でそんなもん持ってやがる!? 私物か!?」
「さっき墜落した貨物船の積み荷がこぼれ落ちてきたのよ! 持ってきてるわけないでしょ!?」
私は必死に抗議した。