50、マジカルステッキ
「この第一種特殊装備の名は、付属の説明書によるとマジカルステッキだそうですわよ!」
「そのまんまだ!」
「お黙りなさい、悪の腹黒令嬢め! 今こそ愛と正義と美の化身の妾こと、このルーラン様がギッタギタのボロボロにしてやりますわ!」
「何よ、私は子供番組の一話限りのやられキャラじゃないわよ!」
「問答無用! お食らいなさい、レミケード!」
なんとクラゲの頭越しにルーランが呪文を唱えると、【ザジテン】が掲げたキンキラキンに輝くゴテゴテステッキの先っぽのクラウンから謎の光線がシュピピピピと射出され、【ラキソベロン】を直撃した。
「ぐがあああああああ! ……って、何よ、別に何のダメージもないじゃないの! まったくビビって損したわ!」
「まったくですね。あれも一山いくらの外れアイテムか何かの類でしょうか」
「かもね。よーし、次はこっちのターンよ、覚悟なさい……って、なんか急に眠気が強くなってきたんだけど……なんかさっきのコーヒーに睡眠薬でも入ってた?」
「そんなもの入れてどんな超展開しろっていうんですか、お嬢様……って失礼ながら、ふぁ~」
「ああああっ!」
突然襲い来る睡魔の大群に私はいぶかし気に思ったが、なんとアロエまでもが生あくびを発したので、これは緊急事態だと確信した。
「ど……どういうことよ、これ……脳みそくん、なんかわからないの……?」
『ZZZ……』
「ってデバイスの方が先に寝るんじゃねーっつーの!」
私は突っ込みの勢いを借りてなんとか傾きかけていた身体を起こし、両眼を擦った。
「もう間違いないですね、お嬢様……さっきの光線は……睡眠攻撃!」
「多分ね……そうなんでしょう、ルーラン!?」
アロエもギリギリで意識を保ちながら、前を睨みつける。私も同意見で、眠気覚ましに脳内で素数を数えつつ、クラゲの後ろに向かって叫んだ。
「オーッホッホッホッホッ! ご明察ですわ! でもわかったところでもはやどうしようもありませんわよ!」
嬉しさと軽蔑に満ち溢れた高笑いが返って来たため、怒りで脳が沸騰しそうになった。