5、SDAG(スペースダンジョンアタックゲーム)
資源が枯渇し環境が悪化し灼熱の惑星となった地球から人類が宇宙に進出し、地球と火星間の公転軌道上にある、宇宙を漂う小惑星マグコロールを発見した。そこで彼らは魔動力に目覚め、小惑星を中心として数世紀かけコロニーを築いたが、計画性が皆無だったためどんどん巨大化かつ複雑化し、やがては広大なダンジョンのようになってしまった。
なお、コロニー建設時に途中から人型巨大機械が用いられ、【オリジナル・ビルド・システム】、通称OBSと呼ばれた。しかし何故かその機械は魔動力を持つ女性にしか扱えず、未婚の者が多かったためか【お嬢様武装システム】なぞと陰で呼ばれた。そう、その機械は争いごとにも使用されたのである。
やがてコロニー内の放棄された地区をOBSで探索したりレースをするゲームが流行るようになり、配信で更に人気に火がついた。人々はそのゲームをスペースダンジョンアタックゲーム、通称SDAGと呼んだ。
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「ってクソ長い今更な説明を開会式でされると眠くなるわね、ふわ~っ……」
「お嬢様、せめて口に手を当ててください。既に配信している方もいますし、報道陣も来ていますので」
「わ……わかったわよ」
私はしぶしぶ出かかったあくびを嚙み殺した。現在時刻は夕方七時頃で早めの夕食を取ったばかりだ。私が今いるここスタート地点兼開会式会場の巨大コロシアムはマグコロールコロニー第三層の外壁部に接しており、ドパコール社の所持する施設とのことだった。天井部分は分厚い特殊強化プラスチックが何重にもはめ込まれ、実際に宇宙空間をその目で鑑賞することが出来た。つまりはコロニー内でもこの層のみの、いわゆる「宇宙窓」である。
様々なロボット競技が開催可能な広大なグラウンドには、数十体のOBSが既にスタンバイしていた。それぞれ姿形は様々で、中世の騎士の甲冑姿に似た外見のものや、孔雀のような羽根を畳んでいるものや、サイコロを積み重ねただけのようなものなど、個性豊かだったが、等間隔で直立不動で立ち並んでいる様は軍隊の式典を彷彿とさせた。
周囲の観客席には数千人の観客たちがスタートを今や遅しと待ち構えており、特別席のドパコール社CEOことチガソン・ドパコール自らによる説明を聞いていた。といっても立体ホログラフィだけど。