49、魔動力
そう、そもそもOBSの動力自体が私自身の魔動力を使用しているのだ。だからこうして操縦しているだけでもどんどん目減りしていっている。更に今日は頻繁に魔法を唱え過ぎた。魔動力は睡眠を取れば回復するのだが、さっきの仮眠程度じゃスズメの涙で、やはりしっかり長時間熟睡しないと完全には戻らない。
「なんか魔動力がモキモキ回復する飲み物とかないの、アロエ!?」
「はぁ……シュールストレミングとサルミアッキとホンオフェとキビヤックを混ぜたジュースを飲めば上がるかもしれないって説がこの前どこぞのまとめサイトに載ってましたが……」
『オゲエエエエエエエエエエエエエエ!』
「それ絶対信じたらダメなやつじゃない!? どう見ても闇鍋汁だよ!」
やはりネット情報は当てにならないと確信しつつ、私は打開策を練る。魔法を駆使して目の前のこいつを叩き伏せたところで後ろにあのカウントダウン野郎がメインディッシュとして控えているのだから、戦力は温存しておくに越したことはない。恐らくこいつらはそこら辺も計算済みなのだろう。むかつくけど頭脳派だ。
「あったわ! これですわ! 間違いない!」
障壁の向こう側でルーランが、通話無しでも聞き取れるほどの大声を発する。さすがオホ声でバズっただけはある下品な奴だ。
「くそ、遂に先を越されたか……しかし、あれは何の冗談なの!?」
【ザジテン】が得意げに上に向かって伸ばした朱色の左腕には、何とも奇妙な物体が握りしめられていた。
「どう見ても、女児と大きなお友達が大好きそうな玩具と思われますね」
アロエの指摘するとおり、【ザジテン】が手にしているのは、古来より延々と日曜日の朝八時頃からやっている伝統ある児童向けの少女たちが変身して悪の組織と戦うアニメに出てくる、いわゆる魔法のステッキに見えた。主人公が敵をこらしめる時使用しているような、宝石やら飾りやらが山ほど付いた、先端部分に王冠がちょこんと乗っかっている、玩具会社が作った感じのアイテムを巨大化したような杖だった。