30、悪魔合体
城塞のごとき大きさの巨人と化した悪魔は言いました。
「お姫様よ、俺の体内に入り込み、一体化して共に戦うがよい。俺を召喚するほどのあんたの強大な魔法と俺の最強の肉体が合わされば、鬼に金棒、じゃなくてこの場合は……悪魔に三叉槍ってか?」
「なんでもいいけど、確かに強そうね……うちで飼ってる番熊よりも強いかしら?」
「もちろんさ! 百万の軍隊だろうといちころよ! さあ、早く乗った乗った! 一番上からな!」
「わかった、乗るわ!」
というわけでお姫様は悪魔の二つに割けた頭蓋骨に乗り込むと、黒い魔力を悪魔の脳みそに直接注ぎ込み、命令しました。
「よし、まずは手始めに隣国の火炎の王国を滅ぼすわよ!」
「ほいきた! それ!」
こうして二人……否、一体化した漆黒の魔物は空高く舞い上がりました。
・ ・ ・
『ツクヅク実家ガ太スギル……ウラヤマシイ……』
「まぁ、細かいことはいいのではないですか? どうせ優勝するのはうちのお嬢様に決まっておられますから、賞金でどうとでもなるでしょう」
『ソノ根拠ノナイ自信ハイッタイドコカラ来ルノヤラ……ガガガガガガガガ』
「それ以上余計なことをほざくと包丁でチタタプして味噌つけて夜食にするわよ! 小腹も減ってきたしね」
だんだん煩わしくなってきたので、私は夜食じゃなくて脳みそを直接グリグリして指先一つで黙らせた。
『ワワワワワワワカリマシタタタタタタタタ』
「お嬢様、先ほどの唐揚げの残りならまだ少々ございますがお持ちしましょうか?」
「あれってビサコジルのでしょ? クソ不味いからやめてちょうだい! まったく、スペースウーバーイーツでも取りたい気分ね」
「さすがにレース中はちょっと……まぁ、本日のゴールまではだいぶ近づいたのでそれまで我慢してくださいませ。そろそろ居住区域にも接近しますので」
「わかったわよ! だいぶあちこちで時間取られちゃったし、ここからは巻きでいくわよ! うおおおおおおおおおおおおおおっ!」
加速した【ラキソベロン】は全てを置き去りにして道を急ぐ。そう、いつの間にか夜の十二時まで後一時間半を切っていた。しっかし眠いわ……。