23、道半ば
あの日、傷だらけでぶっ倒れたままの緑髪の子に寮の部屋番号聞いた後それとなく注意喚起したのも事実だ。私の魔法は対象を視認しないと発動できないタイプなのだ。てかあんな半熟卵だのレタスだのサバだの痛み易そうな代物ばっか挟んだサンドなんか食うんじゃねーよ……って、私もそうか。
「お嬢様、旧交を温めるのも結構ですが先を急ぎましょう。まだまだゴールまでは長いので」
「別にあんな奴と旧交もクソもないわよ! ま、このまま逃げ切れるでしょうし、おさらばよ! バイバイキイン!」
「ま、待てーっ!」
後方で天井がメリメリと剥がれ、展開図のように折りたたまれて立体と化していく。ようやく変形が完了した時、そこに顕現したのはスタート地点で見かけたサイコロが三つ積み重なったような形のOBSだった。
「ああ、あんたあの機体だったの! なんかやけに場違いな弱っちそうなのがいるわと思っていたけど」
「うるせーわ! この形態が偽装に最適なんだよ! どんだけ助けられたかわかんねーくらいだ! とにかく貴様は絶対にここから先へは行かせねえ! 俺にミサイル打ち込んだ責任取りやがれ!」
「じゃあ結婚でもしてあげればいいの? あいにくそんな趣味はないのでさようならー」
私はわめく彼女を遥か彼方に置き去りにしたまま通路をひたすら驀進する。あんなヤンキーの相手はまっぴらごめんだ。幸い相手のスピードはそれほどでもなく、見る見るうちに彼我の距離差は開いていく。
「なーんだ、口ほどにもないのね。所詮擬態して不意打ちしか能のないD級OBSね」
「先ほどのミサイルが運よく相手のシステム系に当たって機動力が低下している可能性もありますので、油断は禁物ですよ、お嬢様」
「はいはい、あんたって本当に心配性ね、アロエ。そんなんじゃ禿げるわよ……って何事?」
口やかましいメイドを適当にあしらいつつも、私はモニター画面がアラートを発しているのに気づき、眼を見開いた。
「500m先の通路が壁が崩落していて通れないですって!? どういうことよ!」