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16、幕間の検査

「では、息を大きく吸って、止めて下さい」


「すーっ」


「はい、チーズ」


「チーズいらんだろ!?」


「はい、もういいですよ」


「ブハーッ!」


 私はアロエの指示の元、造影剤を使用した全身のCT撮影を終えて、ようやく溜まった息を吐き出した。


「造影CT検査って血液の流れに沿って全身が熱くなる感じが嫌なので、あまり好きじゃないのよね……」


「なんでも男性の場合は大事な箇所が熱くなるのがたまらんそうですよ」


「そのミニ情報どうでもいいわ! 検査中ずっと勃起してるわけ!? そこんとこどうなのよアローゼン!?」


『俺に聞くなよ! 受けたことないわ!』


「で、私の調子はどうなのよ?」


「今のところあまり変わりありませんね。脳への浸潤度は相変わらず一番強いですが、卵巣や子宮への浸潤は比較的軽度で、肺や肝臓などへの転移も見られず、小康状態を保っております」


 造影剤の注入用に使った注射針を器用に抜きながら、彼女がテキパキと答える。


「そう……わかったわ」


 私はシート調節を行いゆっくりと身体を起こす。とりあえず悪化がないのは良ことだが、改善もしていないのでプラマイゼロだ。まぁ、脳腫瘍といっても今のところ精神的には何の影響もないので実感は乏しいが。


「しかし毎回面倒ね、これ。それになんで不妊の女性ってこんなに多いのかしらねぇ? 聞くところによると最近の夫婦の4割程度は不妊だそうじゃない」


「いいですか、お嬢様。不妊には様々な原因があり、一筋縄にはいきません。専門的な話になりますが、ちょっとご説明させていただいてよろしいですか?」


 アロエの瞳がきらりと輝き、女教師モードに切り替わる。私はこいつは長くなりそうだぞと身構えた。


「ま、まあいいけど、レース中だし手短にお願いね」


「かしこまりました。女性の妊娠にかかわる臓器は卵子を作る卵巣や、胎児を育てる子宮の他にもそれらにつながる子宮頚管、卵管など多岐に渡ります。更に言えば、妊娠とは大脳の視床下部や脳下垂体から出るホルモンが関与しているため、それらの異常が原因となる場合もあります。更に年齢が上がると子供を作る力が男女共に落ちていき、不妊率も上昇します。ここまではよろしいですか?」


「なんか似たような単語が多くてよくわかんないけどなんとなーく理解したから次行ってちょうだい!」


 彼女が半月のようなジト目になったが、あきらめたように小さくため息を吐いた。

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