156、緑色の壁
「で、ホーリンが何だって?」
「もういいですわ……って言いたいところですが、一応仮にも同盟を結んだ仲ですので、死なれては困りますから特別にお教えしますわ」
「サラジェンも混ぜてやっていい?」
「あいにく蜘蛛類は大嫌いなのですが……止むを得ませんわね。この際一緒にお聞きになってください。よろしいですわね?」
「……はい」
心なしかサラジェンの声色が更に沈んだように感じられたが、気にするのも時間の無駄なので、「じゃあさっさと話しちゃってよ」と私は先を促した。
「よいですか、昨日レース中に、ホーリンはこう妾に告げたのです。『何となくだが緑色の壁が現れたら気を引き締めた方がいいかもしれん。これは予言と言うよりも勘に近いが、魔法の副作用によるのかこれが結構当たるのでな』と。確かに以前から彼女は勘が鋭い方でしたので、一考の余地はあると妾は思い、記憶に止めておきました。今こそまさにその時だと断じても良いでしょう」
「……はぁ」
正直言ってかなり怪しげな根拠だなあと思いながら私は聞き流しており、つい鼻くそをほじりかけたくらいだが、まあ亡くなった友達の遺したアドバイスであることは確かだし、無下にも出来ない雰囲気だった。
「でも、先ほどから誰もいなくて何事もないのもかえって不気味だとは思います、お嬢様。ここはホーリンさんの警告に従って、調査をしてみるのは如何でしょうか?」
アロエがルーランの尻馬に乗って発言する。うーむ、でも彼女が支持するということは、かなり信憑性がありそうだ。このレースは次々と予想不能な出来事が起こるし、用心に越したことはない。それにしてもこの壁の色合い、どっかで見たような気もするが……気のせいか?
「まあ、そこまで言うのであれば、駄目元でやってみてもいいわよ。でも具体的にはどうするわけ?また誰か生贄を選ぶの?」
「やはりさっきのは生贄だったんですね!」
またしてもルーランがブチ切れそうになったがシカトした。




