154、再会
「やーっと見つけましたわセンナさん! 待ちなさいませー!」
私が回想にふけっていたまさにその時、後方からすごい勢いで朱色の残像をたなびかせて追い上げてくる一台の見慣れた機体がバックモニターに映った。あの発情期の獣のごとき野太くかつけたたましいゴリラ声は……。
「間違いないわ! 待ってたわよ! ルーラン・モイゼルト! よく生きてたわね!」
「何が待ってたわですかこの悪役令嬢があああああああああああああですわ! よくも人をあんな危険地帯に置いてけぼりにしてくださいましたわね! スルピ」
そこまで言いかけて、例の同盟をようやく思い出したのか、短気な令嬢はあわてて口を閉ざした。
「なーに言ってんのよあんた! せっかくこっちが貴重な戦利品を飲ませてあげようとしても、全然口をつけそうにないから仕方なく先に行ってただけじゃないのさ!」
「ですからそれはあなたが卑劣な手を使って妾を悪魔の子宮の生贄に提供したからではありませんか! 本当に死ぬところでしたわよ! あれくらいのサービスは当然のことです!」
「まあ、あれも作戦の一環だったわけよ。結局お互い無事切り抜けられたからいーじゃないの。ケセラセラってやつでモーマンタイよ」
「だいぶ違うような気がしますが、まあ、おっしゃる通り難所を突破したのは確かなので、事象の地平線よりも広大な我が心を持って、今回だけは目をつぶってさしあげますわ」
余燼冷めやらず烈火のごとく憤っていたルーランだったが、それでも話しているうちに徐々に鎮火してきた様子で、次第に落ち着いていった。
「はいはい、わかりましたでございますことよ、ルーランさん」
「なんですかヘラヘラと楽しそうに! 今度やったらただじゃおきませんわよ!」
いかん、やつと喋っていると朴念仁のようなサラジェンとの対比でやけに人間的な反応が返ってくるのがことのほか楽しく、つい口元がにやけてしまう。こいつはちょっと気をつけねばならないな。




