152、換骨奪胎
-そんなこんなで私たちが子宮の群れを脱してから約六時間後-
私の【ラキソベロン】とサラジェンの【グリベッグ】は並走して飛びながら、お互い魔動力通信で定期報告を行なっていた。
「……何もないわね」
「……そうですね」
「……退屈ね」
「……そうですね」
「……」
「……」
「ところであんたって身体のどこらへんが悪いの?」
「……卵管ですね」
「へー、私は脳だけどいろいろあんのね」
「……そうですね」
「……」
「……」
「どうでもいいけど『換骨奪胎』って四字熟語ってなんかエロイわね」
「……そうですね」
「……」
「……」
「どうもいいけど『玉体横陳』って四字熟語ってストリップショーのことだそうよ」
「……そうですね」
「……」
「……」
(ああ、なんかイライラする!)
息が詰まりそうになって、私は思わずコックピットを全開にして外の空気を思いっきり吸いたくなる衝動に駆られたが、どうせ誰かさんに止められるので我慢した。
サラジェンはあのキャピキャピアゲアゲクソ配信が嘘のような超陰キャで、何をこちらが振っても会話が五秒以上長続きすることが無く、私の繊細な胃に穴が開きそうだった。
なお、今の状況を説明すると、結局あの後ルーランの野郎は待てど暮らせど目覚めないので縛られた子宮やバルコーゼと一緒にその場に放置して、我々二機で先を急ぐことにした。あの場所でかなり時間を食ってしまったため、これ以上の時間のロスはもう出来ないとの判断もあり、致し方なかったのだ。まあ、あのファイヤーボンバー令嬢なら十分たくましいから、あの環境でも一人で強く生きていけるだろう。南無。
それにしてもバルコーゼの方は謎が多い。何故子宮の化け物がママンに見えたのかよくわからないのはもちろんのこと、どうして彼女の機体だけがあの触手攻撃の被害に遭わなかったのかが最大の謎だ。あいつがチューチュー吸われて良いオホ声を無様に上げるところが鑑賞できなかったのが残念なせいも無いことはないのだが。
まあ、世の中はわからないことばかりだし、深く考えると禿げるそうなので、いずれ余裕が出てきたら検討するとしよう。玉体横陳も見たかったが……。




