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149、メイドの策

「じゃあそれを一気に飲み干した私は一体何なんだよ!? そんなもん主人に勧めるんじゃねえ!」


「いえ、それは仕方がないことですし、お嬢様もけっこうノリノリでしたから……」


「そうだっけ!? で、結局残り1本の行方はどうなったのよ!? 正直に白状しなさいようごおおおおおおおおお!」


「いえ、ですからそれこそがヒントなのです」


「!?」


 私は禅問答のごとき彼女とのやり取りで思考が緊急停止しそうになったが、次の瞬間目にした光景のため、強制的に理解させられた。


 現在バルコーゼの周囲の足元には、子宮たちが移動したせいで全身を現した、ザラジェンの操縦していた蜘蛛ロボットこと【グリベッグ】の縮こまっていた八本脚がわずかに震えたかと思うと凄まじい勢いで広がり、ひっくり返っていた身体を元の体勢に戻したのだ。しかもどうやら魔法を連射するのに夢中なバーサーカーモードのバルコーゼはまだ気づいていなさそうだ。


「ひょ、ひょっとしてあんたの策って……!」


「ええ、先ほどルーランさんにペットボトルをお届けした際、どうせですからサラジェンさんの方にも残りの1本をお渡ししたのです」


「ど、どうやって!?」


「お忘れですかお嬢様、ドローンはもう一台予備の物があったので、それをこっそり使わせていただきました」


「あんた同時に二台ドローンを操縦したっての!?」


「その程度のことはお茶の子さいさいでございます。それよりもお嬢様、画面に集中してください。今は戦闘中です」


 何事も無さげな様子で天才メイドは謎を明かしつつ、現実へと引き戻す。そう、今まさにモニター上では、【グリベッグ】が何やら脚を動かし、形を組み替えている。あれこそが奴の魔法の発動条件なのだろう。


「クロピドグレル!」


 甲高い呪文の詠唱とともに、発光する大きな網が蜘蛛の脚先から射出され、投網のようにバルコーゼに覆いかぶさっていった。

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