145、哺乳瓶
「よーしよしよし、さあとっととそのクソ苦汁をゴキュゴキュと景気よくラッパ飲みして不死鳥のごとく炎の中からよみがえるのよ、ルーラン! ファイヤー!」
『ソレッテツマリ一回死ネッテ意味ニ聞コエマスヨッテウガアアアアアアア!』
割と大人しくしていた脳みそくんが久しぶりに余計な口を叩くので、視神経が飛び出している辺りにそれぞれ左右の人差し指をグリグリお見舞いしてやった。これでちったあ眼精疲労も取れることだろう。
「……それにしてはさっきからビクリとも反応しませんね、お嬢様」
超絶技巧でドローンを駆使してペットボトルの蓋を器用に開け、全身の穴という穴から体液を垂れ流してほぼミイラ化しぐったりしているルーランの口元にまで運んでやるという出血大サービスぶりを発揮しているアロエが、成果の無さを見ながら怪訝そうにつぶやく。
「うーん、触手風呂三昧でよっぽど体力を消耗しちゃったようね、あの淫乱バカ。機体と自分の感覚を同調させる特別モードなんかにしちゃうから、あんなエロ漫画みたいな無様な姿に……」
『ソレッテ間違イナクアナタノセ……オオット何デモアリマセン』
またしても懲りずに不用意な爆弾発言をしそうになった脳みそくんだったが、寸でのところで口を、というかスピーカーへの接続を閉ざして危険回避する。どうやら低級AI並みの学習能力は備えている様子だ、チッ。
「まったくもって使えない駒ね。せっかくこの私自ら宝箱を子宮孔からほじくり返してアロエにウーバーさせたっていうのに。それとも哺乳瓶とかの方が良かったかしら?」
「あいにくそこまでマニアックなアイテムは所持しておりません、お嬢様」
「冗談よ、冗談! さて、これからどうする、アロエ? もうさすがにこれ以上は手が思いつかないわよ。アイデアがいっぱい詰まったアイデアポケットとか落ちてないかしら?」
「僭越ですがそれはAVメーカーの社名です」
アロエの突っ込みはドローンの操作中でも冴えていた。




