139、オープン
「なるほど、そこまで見抜いておられたとは……素晴らしいプロファイリング技術でレクター博士も真っ青です」
「それ褒めてるわけ!? どっちにせよ、とっとと飲むわよ。子宮の中にあったっていうのがちょっと嫌だけど」
「でも御所望のチョコレート味のようで良かったですね、お嬢様」
「まあ、どうやらそのようだけどね……でも、あまり食欲をそそる色じゃないわね、これ」
私はすげえ凶悪な細菌がウジャウジャいそうな何とも言えない風合いのペットボトルの中身を透かし見しながら、ため息を吐いた。本当に人間が口にしていいものだろうか、これ?
『センナサン、早クシナイトルーランサンガ!』
「ああ、すっかりそんなこと忘れてたわ」
脳みそくんの忠告で私は我に返り、モニターの端を眺めた。
もはや赤い機体は桃色の淫獣たちに蹂躙されまくっており、あれほど激しかった喘ぎ声も、いつの間にか、「あ……お……お゛……あぐっ!」と晩夏の死にかけのセミの鳴き声のようにとぎれとぎれとなっていた。この分だと昇天するのも時間の問題であろう。
「まあ、どうせあいつまた私にちょっかいかけてくる可能性も高いし、ある意味始末する手間が省けていいのだけれど……」
「お嬢様!」
「わかってるって。一応仮にも現在同盟中だし、確かにこのまま見殺しは目覚めが悪いからね……さてと」
画面から目を離し、私は再び吐瀉物か排泄物のごときドリンク飲料と対峙する。中々これに口をつける決心が湧いてこないが、早いに越したことはない。
「まったく、消費者目線での商品開発の努力をもっとするべきだわね、あのクソCEO……」
駄洒落野郎への怒りをパワーに変えて、蓋をギュッと捻って一気に回す。それほど力は必要なく、蓋は素直に開いた。
「ぐぼおおおおおおっ!」
途端に凄まじい臭気が口元から溢れ出し、私は今日二回目の嘔吐を盛大にぶちまけた。何でこーなるの!?