137、レジ袋
「やったあああああああ! 産まれたぞおおおおお! エイドリアアアアアアアン!」
以前第三層の通路で見かけた、赤をベースに金で縁取られた巨大宝箱が遂にゴロリと生まれ落ち、私は助産師の気持ちがわずかだがわかった気がした。ちなみに用済みとなった母体の子宮の方はそのまま床へと自由落下していく。さらば子宮よ。
「おめでとうございます、お嬢様。玉のような……っていうか直方体のようなお子さん……じゃなくて宝箱ですね」
『ナ……ナンカ感動的ナモノガアリマスネ……宝箱ダケド』
「まだまだここからよ! いよいよフェイズ3のお楽しみタイムよ!」
お祝いの言葉を受けながらも、私はこのミッション……「しょくしょくしょくしょくしょくしゅっしゅ!」作戦の最終段階へと移行した。つまりは……。
「ゲートオープン! 箱の中身はなんだろなー!?」
【ラキソベロン】の左手を宝箱の蓋にかけて、そのまま強引に持ち上げる。メリメリっという音を立てると、ついに待ち焦がれたお助けアイテムが姿を現した。
「……ってコンビニ袋!?」
なんと中にはあのお馴染みの一枚数円の半透明なレジ袋がちょこんと鎮座していた。もっとも袋だけではなく、中に何かが入っているのは確かだが。
「買い物帰りの主婦が忘れていったんでしょうか?」
「子宮の中に置き忘れるってどんだけおっちょこちょいなんだよ!? てかかなり小さいし、ここからはOBSの手じゃ困難ね……」
「ドローンを使えばよろしいのでは?」
「おっ、その手があったか! よっしゃカモン蝙蝠くーん! てか脳みそ仕事しろ!」
『ハイハイ……仰セノママニ』
調教の結果だいぶ従順になった脳みそくんのコントロールによって、宝箱の内部にフラフラと舞い降りた蝙蝠型ドローンだったが、レジ袋をぶら下げて戻ってくると、コックピット内にポイッと放り込んだ。
「お使いありがとー! さーってと、戦利品は……ペットボトル!?」
なんと中にはドブのような色の液体をたたえた三本の500ml入りペットボトルが入っていた。