134、一か八か
彼女は昔から、私の脳内をテレパシーで読み取りでもしたかのように懇切丁寧に解説をしてくれる。いつでも私の欲しい時に欲しい言葉をかけてくれるし、得難いメイドだ。
「ま、そういうことよ。だからわざと男汁が出そうなほどの軍隊方式にして、簡単には逆らえない雰囲気を醸し出していたってわけ。誰も好き好んでわざわざ触手風呂にお呼ばれしたくないからね……下でほぼ死んでる約一名を除いては」
私は、いまや死んだクモそっくりに八本足を丸めて床に転がっている【グリベック】を見下ろしつつ、からくりを明かした。
「さすがの一言でございます。さて、この後はどうされるおつもりですか?」
「……」
私は考えをまとめつつ気合いを入れる。ここまでくればミッションクリアまであと少しだが、まだまだ油断は禁物である。心の褌を引き締めると、再び新兵達にコンプラ違反上等の口調で命令を下した。
「糞がア〇ルにモリモリ詰まった野郎ども! あの羊水がドロドロに腐りきっただらしない子宮の淫乱で貪欲な卵管っていうか触手に速やかにぶっといミサイルをぶち当て破壊せよ!」
「はい! で、お嬢様は?」
「大佐と呼べ! 吾輩はその隙に大魔法を詠唱する! 急げ!」
「『ラジャー!』」
号令一下、一丸となった我が小隊は一糸乱れぬ抜群のチームワークでことに当たる。アロエがミサイルの標準を合わせている間に、私は脳みそくんに手を当てて意識を集中させ、重力魔法を最大出力で放てるように身体中の魔動力を指先に集めるイメージをする。
(もう限界ね……でも、やるしかない!)
そう、おそらくこの一発を撃てば私は完全にエネルギー切れとなり、この場でダウンするかもしれない。もはやこの作戦はプロジェクトヘイルメアリーもびっくりの単なる賭けだった。一か八か、伸るか反るかの正気とは思えぬ一大勝負。
だがわずかでも勝算があるのならば、やってみても損はないだろう。ここぞという時の自分の悪運の強さは今までの戦いで実証済みだ。何しろ私には幸運の女神ならぬ悪魔がついているのだから。