133、ラジャー
「何すんのやめてくださいませえええ妾なんて美味しくありませんわよおおおおあくふぇぎぃお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛っほおっおまっ!」
魔動力通信を通じてコックピット内に非常に良質のオホ声が爆発する。さすが感覚同調モードとやらがオンになっているだけはある。おそらくオフにする余裕もないのだろう。もし私が男だったら「聞くだけで勃起するわい」と感想を漏らしたいほどだ。
「よーし、彼女の尊い犠牲を無駄にしないためにも、今から作戦フェイズ2に移行する! いいな、野郎ども! ちなみに答えは『ラジャー』のみだ!」
「『ラジャー!』」
もはや誰も命令に逆らうことなく、速やかに返事か返ってくる。まあ、あんなものを目の前で見せつけられた直後では当然だろう。
なお、現在「あんなこと」ことルーランの騎乗する燃える闘魂僧兵ロボ【ザジテン】は、突然与えられたご馳走に群がる犬のように、四方八方から押し寄せてくる子宮どもに魔動力をチューチュー吸われている。てかあれって美味しいのか?
「だからやめろってこのやあああてへええええぇぇうぎぃおおおおおぐげああああ!」ってなんかヒステリー気味な口調も混じっているが、そもそもヒステリーとは古代ギリシャ語で子宮を表す「ヒューステラ」という単語から来ているので、何も問題ないだろう。そして私の思惑通り、とある現象が起こっていた。
「よーしよしよし、計画通り!」
私は右側の口角を吊り上げ、かつてなく邪悪な悪魔の笑みをまとう。新鮮な餌につられて子宮の群れが猫まっしぐらに広間の右端に民族大移動していくため、左端の方は現在閑古鳥状態となり、子宮の姿もまばらになっていた。
何より例のお助けアイテム入り宝箱が内部に仕込まれていると思しき個体はその分動きも遅く、ノロノロと亀の歩みで床を這い進んでいるが、仲間たちから取り残され、完全に孤立していた。古来より臨月の妊婦は移動が大変なのだ。
「やはりお嬢様は偉大でございます。あの場所の左端にターゲットがいたので右端の方に敵を集中させるため、ルーランさんをおとりとして使われたわけでございますね」
さすが忠臣は全てを察していた。