132、赤飯
「ねぇ、ちゃんと答えてくださいませ、センナさん!」
ルーランの語気が強くなる。なんか炎のエフェクトまで見えてきた気がする。私は仏のごとく穏やかにアルカイックスマイルをたたえた。
「怒ってなどこれっぽっちもないさ。あれがあの時の貴様の作戦だったのだからな。だから今から私が行う作戦に対しても当然文句なんてないよなあああああああああああああ!?」
押さえつけられていたマグマ溜まりが一気に噴出するように、絶叫とともに私は【ラキソベロン】をフルパワーで操り【ザジテン】にショルダータックルし、奈落の底へと弾き飛ばす。そう、無数のピンク色の触手がイソギンチャクのようにうねる魔の海域へと。
「ぎえええええええええええ! 痛いですわあああああああああああああ! いきなり何をなさるんですのおおおおおおおおおおお!?」
けたたましい叫び声を上げながら、バランスを崩した真紅の機体は成すすべもなく、狙った通りの場所へと吸い込まれるように吹っ飛んでいく。そう、おぞましい子宮の群れの右端部分へと。
「よっしゃー! ナイッシュー! チャーシュー麵!」
手を額の前にかざした私は自らの抜群のコントロールを褒め讃える。だって誰も褒めてくれないし。悪役令嬢たるもの、社会人のように自分の機嫌は自分で取らないといけないのだ。
『ナ……ナナナナナナナナナナナナナ!?』
わけのわからない脳みそくんはひたすらキョドってる様子だが、理解力の無い奴は放っておくしかない。私とアロエは神のごとく天空の高みから地上に墜ちた哀れな子羊を睥睨し、かつ観察する。
「おのれセンナさん、何故このような非道な振る舞いをなさるのですか!? これでは作戦などではなくて単に私怨を晴らすだけの愚かな行動ではないのですか!? ってあぴょおおうおうおぅおうおおおお!?」
下で散々悪態を吐いていたルーランだったが、機体が触手に接触した途端に声色が黄色く変わった。やったねママ! 今夜は赤飯だ!