129、昨日
「子宮です。あの隅っこにある子宮だけ、妙に形が角ばっていませんか?」
彼女の指摘する通り、画面端の子宮だけ、やや体型が他の者よりも直線的な輪郭で構成されており、例えるなら、まるで肉で出来た丸い屋根の家といったところだった。二本の触手を元気に振り回している点は他と変わりなかったが。
『ハテ、アノフォームハ確カドコカデ見タヨウナ気ガ……』
「ああっ、ひょっとして、昨日の……」
脳みそくんとルーランがほぼ同時に何かに閃いたようだが、どうやら後者の方が一歩先を行っている様子だ。私は満足げにうなずいてみせる。だてに私に三連敗しているわけじゃないな、こいつ。
「どうしたルーラン、『昨日の』何か、言ってみろ。発言を許可する」
鬼軍曹モードのまま、私は底意地悪く彼女に促す。ルーランは一瞬ためらったようだったが、尊厳破壊に慣れてきたのか、意を決して話し出した。
「昨日の夜、妾が貴方と最後に戦った時、あの床下一面に散らばっていた宝箱と似たような形をしていると思いましたわ。貴方もそう仰りたいんでしょう?」
「正解だ」
私はにやりとほくそ笑む。そう、彼女及びホーリンと死闘を繰り広げたあの宇宙窓の連なる通路で大量に見かけた宝箱が肉の皮を被ったら、まさにあんな格好になるだろうということが、私の気づいたことなのだ。つまり……。
「つまり、あの子宮の中にはお助けアイテムの入った宝箱が隠されている、というわけですね、お嬢様?」
今まさに口にしようとしていたことをアロエに言われてしまい、ちょっと悲しくなった私だが、ここはリーダーの度量を示して、「ああ、その通りだ」とだけ答えた。
「と、とんでもないことを考えますわね、あのCEO様は……あんなものに近づきたくなどありませんわよ、妾は」
「だが、結局は誰かが取り出さなければいくら便利アイテムとはいえ、それこそまさに宝の持ち腐れだ。さて、これからどうするか、それこそがこの作戦会議の最大のミソだ」
私は話を進め、司会者としての威厳を示した。