126、光明
(これまでだって一見薄氷を踏むような絶体絶命状態でも、勝ち筋は必ずあった……何かあるはずだ……何かが……)
その信念に従って、何か解決策はないかとひたすら現在の子宮どもをチェックする。きっとどこかに見落としているものが存在するはずだと信じて……ん?
そこで私は初めてかすかな違和感を覚えた。本当にごくわずかで、目をそらせばすぐ忘れてしまいそうな些細なことだが……これはひょっとして、突破口なるか!?
「えっとアロエ、あのダディジョークマンはさっきの朝礼のレース説明の後半、何て言ってたっけ?」
私は考えを整理するため、あやふやな自分よりも確実な外部記憶の助けを借りることにした。
「あららー、またしても酸素欠乏症か何かですの、センナさん? 先ほど妾が教えて差し上げたばかりではなくって? 本当にしょうがないですわねー」
「だからさっきのはヘソピアス女子アナの話であって、今回は全然違うでしょーが! あんたこそ……クリオネじゃなかったクリオナのし過ぎで頭が」
「はい、そこまで! いいですか!?」
突如アロエが全宇宙に木魂するかと思われるような力強い柏手を打って強引に話を戻す。ヒートアップしかけた私とルーランのアホもたちどころに静まり返った。
「今朝、チガソンCEOはこう仰いました。『もちろん今回もお助けアイテムが用意してありますが、思わぬところに隠されており、そしてその分障害もありますよ~しょうがないですけどね。敵とかいるかもしれませんが適当に戦えばなんとかなるかも?』これでよろしいですか?」
「……そうね、ありがとう、アロエ」
優秀極まるメイドは腐れCEOのオヤジギャグまで一文字一句違えず正確に再現したので突っ込みたくなる衝動に再び駆られたが、何とか堪えて吞み込んだ。
(けど、思った通りね、やっぱり……)
刺激を受けて私の思考回路が活性化し、徐々に回転速度を上げていく。
(考えろ……考えろ……考えろ……!)
もはや脳内が焼き切れそうになるほどスパークしてきた時、遂に一筋の光明が差し込んだ。




