124、配信動画その7
「だーかーら、あんなにオッホオッホするあんたの方が……」
「何度も申し上げて恐悦至極ですが喧嘩するなら全部終わってからにしてくださいお嬢様! ルックアットザシキュウ!」
「はひっ」
アロエの口調が雪山の風吹のごとく一段と厳しさを増したので、私は反射的に言い争いをストップし、意識をモニター上に戻した。こいつマジ切れすると異常に怖いのだ。
『にゅよおおおおおあああーんッんおッぶお"ッぼッ!』
今や哀れなサラジェンはハードコアな洋物AVでも滅多に聞かないような嬌声をけたたましく上げ続けているが、そんなものはASMRで割と慣れている私にとっては普通に聞き取ることが出来た。
『いっきゅううううううまどうりょくお◌んぽミルクでりゅうううううううう!』
「どうやら古代みさくら語が混ざっているようだけど解読可能ね……って『まどうりょく』ですって!? てことは……」
「はい、お嬢様、どうやらあの子宮の触手、つまり卵管に当たる部分は触れただけでOBSの動力源である魔動力を吸収する作用があるようです。自分が行なった画像の解析結果からも同様の結果が出ました。よって彼女はああやってあられもない姿を衆目に晒す羽目になったのだと推測されます。魔動力を一気に失うことは、人によっては凄まじい刺激となりますから」
先読みの得意なアロエが凄腕の名探偵のごとく淡々と私に恐るべきことを告げる。
「う……うそだろ!?」
〇〇占拠シリーズの疫病神というあだ名を持つ捜査官のように私は驚嘆すると共に、いま一度画面に釘付けとなった。確かにあれほど活発だった【グリベッグ】の動きが見る見るうちに小さくなっていき、今やか細く震えるのみとなっていた。
「ハハッ、まんまと蜘蛛の巣に獲物を捕らえたと思いきや、自分の方が囚われの身となったとはとんだお笑い種ですわね、この腐れジョロウグモ娘は。しかし、これでようやく他の皆様方がどうやってこのおぞましい一角を通過できたのか、よく理解出来ましたわ」
辛辣な台詞を吐きながらも、ルーランも推理に参加してきた。うるさい黙れ。