122、配信動画その5
『いやーん、サラジェンったら実はこーいうぷよぷよでぷにぷにしてる可愛い生き物に目が無いんだよー可愛いは正義で世界を救ってしあわせ! しあわせ! しあわせ!』
「なんでじゃあああああああああ!」
耳を押さえながらもつい突っ込んでしまう。いくらなんでもあれをキーホルダーにしてカバンにつけたいとは思わんぞ。
『サラジェン、人生で一回は触手風呂ってやつに憧れてたんだよねー。触手の海の中で転げまわってハァービバノンノして⦅その者青き衣を纏いて触手の野に降り立つべし!⦆ってどこぞの婆様に予言されたかったんだよー!』
「と……特殊性癖過ぎますわ! 危険思想ですわ!」
ルーランのやつがわめいているのがうるさいが、私もその気持ちには同意する。触手風呂って何だよ……耳かきでもしてもらうつもりか?
『そういうサラジェンちゃんの方が一万倍かわいいよ!』『そうだよ!エリディアンのロッキー並みに萌えるよ!』『アトラクナクアクモクモ!』
萌え豚どもの言っていることは何一つわからんが、とにかく皆正気ではないことだけは伝わった。
『ありがと皆ー! でもさすがにこのまま触手ダイブするのはもみくちゃ熱烈歓迎になりそうで怖いし、一応手は打っておこうかな。行っくよー! クロピドグレル!』
さすがにほんまもんのあほうではなかったようで、サラジェンは何らかの呪文を唱えた。途端に白くてかすかに輝く光の網が出現したかと思うと、視界一面を圧倒する子宮の群れにふんわりと覆いかぶさっていく。これぞさっき耳にした、彼女の糸魔法なのだろう。邪悪なコブクロたちは外に抜け出そうともがくも、せいぜい触手を網の目から突き出すだけで、それ以上身動きが取れない様子だった。
「こいつ、見かけによらず意外とやるわね……」
「ですが奸佞邪智に長けたお嬢様の悪逆さには、所詮遠く及びませんよ。ご安心ください」
「それって褒めてんのアロエ!?」
このメイドの方がよっぽど邪悪なのでは……と私はつい思ってしまった。