12、噴火口
「もしもしバルコーゼ、あんた片方のおっぱいが陥没乳頭なんですって?」
再び魔動力通話を繋げた私は衝撃の爆弾ネタを相手に投下する。返事は特になかったが、彼女が動揺しているのは肌で感じ取れた。
「今だ、ナフトピジル!」
魔法の詠唱と共に黒剣ジクアスから暗黒の波動が吹き出し、前方に見える【アバロン】に向かって猪突猛進する。時が止まった天使は案山子のように突っ立ったままだった。だが……
「当たった!?」
「……いえ、違うわ、アロエ。ちょっとばかり擦っただけよ」
珍しく私の方が彼女に突っ込む。見事直撃したかと思った瞬間、【アバロン】は器用に腰をねじり、漆黒の雷のごとき魔法はその右手に持つ大剣の先端部をわずかにかすっただけだった。
「フッ、中々卑劣な手を使うじゃないか、センナ君。でもせっかくの奇襲も無駄だったようだね」
さっそく奴からお見舞いだかお悔みだかの通信が入ってくる。ほっとけ。
「うるさいわね噴火口グロ乳首野郎! どんなチ○ニーしたらそうなんのよ!? ひょっとして毎晩自分でホジくりかえしてダンジョンアタックしてんの?」
「おっとそれ以上の発言は配信できなくなるよ」
「お嬢様、まことに僭越ですがあちらの陥没乳頭さんの仰る通りです」
「うがああああああああ皆黙れ! それよりもバルコーゼ、あんた邪魔だからとっとと尻尾巻いて下がってそこどきなさい! センナ・ニフレック・ピコスルファート様のお通りよ!」
「フフッ、口だけは達者だね。だが悪いけどこちらもお返しさせてもらうよ。見たところ君の重力魔法とやらは一つも僕に効いていないようだしね。ほら、この通り、我が愛剣サプレスタもいつもより軽いくらいだ。さあ、逃げるなら今のうちだよ」
奴は見せびらかすように、右手で黄金の大剣を鉛筆みたいにクルクルと回転させる。さいですか。
「おのれお嬢様を愚弄するとは! それをして良いのは自分だけです!」
「それも違うでしょアロエ! でも大丈夫よ、ちゃーんと全て計算通りだから。さ、今から進路妨害野郎の鼻を明かすわよ。レディゴー!」
私は魔動力を滝のように脳髄デバイスに流し込んで全バーニアを点火すると一気に最高速度まで加速し、流星と化した。勝負はこれからだ。