114、ガン見
「どうやって繁殖させたのかは謎だけどこいつらのブリーダーをしたやつがマニアックで悪趣味だってことはよくわかったわ。でもそれが一体どうしたってわけ?こんなの無視してさっさと先に進めばいいだけの話じゃね?」
私が威風堂々極めて正論を吐くと、皆一様に、「確かに……」という感じにうなずいた。もっともルーランの方は機体が頭をやや下げ、脳みそくんに至ってはブルっと振るえただけだが。
「よし、そうと決まれば無駄な戦闘はスルーパスよ! ていうかもう魔動力ヤベえし!」
私はリーダー権限を駆使して勝手に方針を決める。そうなのだ。もうそろそろ今後の活動に必要な魔動力を温存しておくだけで、マジでいっぱいいっぱいなのだ。本当に今日一日持つだろうか……?
「それじゃあ元気にレッツラゴー三匹!」
「いえ、ちょっとお待ちください、お嬢様」
「ズコーっ!」
威勢よく出発しようとした途端にアロエの待ったがかかったため、私は勢い余って【ラキソベロン】ごとずっこけそうになった。
「んもうアロエったらまいっちんぐ! いきなり水を差さないでよ!」
「お嬢様、気が進まないかもしれませんが、あの触手ウネウネたちを今一度よーくご覧くださいませ」
「はぁ!? 何があるっていうのよ!? 絶対いやよ!」
「そう駄々をこねず、頑張ってください。エチケット袋は用意してありますので」
「わかったわかった、やりゃあいいんでしょ、やりゃあ!」
文句を言いつつも、このスーパーメイドの注進は概ね正しいので、私はしぶしぶ手で庇を作った。のろのろとナメクジのごとく粘液の跡をつけながら動くその姿は背徳的ですらあり、長いこと注視しているとまたぞろ吐き気をもよおしそうになるほどであったが、ピンクの巨体が大相撲夏場所のようにぶつかり合うその隙間に、何やら灰色の物が隠れているのが目に留まった。
「あれは……ひょっとして!?」
私は目を皿にしてガン見する。間違いなくそれは、OBSだった。