111、子宮
通路の先は、先ほどスタートした大ホールほどではないが、広々とした空間となっていた。昔、工場の荷物の集積所かなんかだったのであろう。壁はくすんだ金色で、あちこちに足場や扉が見受けられ、長年使い古された形跡があった。
そしてそこに、悪夢かエロ漫画の中でしか存在を許されないような、巨大な桃色の卵を上から押しつぶして変形させたかのごとき奇怪な形のぬるりとした物体が上から二本の長い触手を突き出しながら粘液を巻き散らして蠢いていた。それも、空間をほぼ埋め尽くすくらいうにょうにょウニョウニョ何十体も。
「子宮? 馬鹿言わないでよアロエ! エロアニメの見過ぎじゃないの!? 茹でタコにしか見えないわよ!」
「違いますよ、ほら、よく見てくださいお嬢様。タコは八本足ですけれど、これは二本しか触手がないでしょう? いわゆるこぶくろってやつですよ」
「……小渕と黒田?」
「多分そうボケるだろうなと思いましたよ。いいですか、子宮ですよ、し・きゅ・う。子供を妊娠する、女性の大事な臓器です。お嬢様にもちゃんと一つございます。子宮は一つ!」
「子宮……」
遂に繊細な私の思考がオーバードライブ波紋疾走じゃなくてオーバーヒートを起こし、一時停止した。
「オゲエエエエエエエエエエエエエ!」
『アアッ、吐カナイデ! ゲロガ水槽ニ入ッチャウウウウウウウウ!』
元は猫のから揚げだったらしきものが見られる茶褐色の吐しゃ物を盛大に巻き散らした私に向かって脳みそくんが何やらわめいているが、今はそれどころではなかった。
「それにしても、いろんな形の物がいますね……」
アロエの指摘する通り、そこに戯れている子宮の中には普通の形の物の他に、二つの耳が飛び出したウサギの顔のようなもの、そこまではいかないが両側が角のように横に伸びたもの、ほぼ完全に根元から二つに別れたもの、蛇のように細長いものなど様々な種類の物が混ざっていた。キショッ!




